独立準備中の弁護士がホームページ制作会社を選ぶ4つの確認項目

この記事のポイント

制作会社はどこも実績の件数と事例集を先に見せてくる。話が似て聞こえるのは、どの会社も同じ質問に答えているからで、残りは自分から聞かないと出てこない。開業日という締切がある独立準備では、面談の前に外に頼む範囲を切り分け、実績の中身・成果の測り方・作り方・開業後に自分で動かせるかの4つを確かめて、答えを提案書に残してもらう。独立3ヶ月前のこの段階で、誰に何をどこまで頼むかが決まる。

「サイトは制作会社に任せればいい」。独立の準備を進めながら、そう考えて数社に問い合わせる方は少なくありません。ところが実際に話を聞いてみると、どの会社も制作実績の件数と事例集を先に見せてきます。「検索に強いサイトを作ります」と言われても、何をどうするのかまでは説明がありません。どこも感じが悪くないのに、集客の面でどこが違うのかが分からない。制作会社選びで手が止まるのは、おおむねこの範囲です。

「ターゲット分野の選定」で扱う分野を決め、「専門サイト vs 事務所サイト」でまず事務所サイトから始めると決めました。ここから先は、そのサイトを誰に、どこまで頼むのかを決める段です。開業日という締切がある以上、面談を何度も重ねる余裕はありません。限られた回数の面談で、比べられるだけの材料を持ち帰る必要があります。

この記事では、面談の前に外に頼む範囲を切り分ける手順と、面談で自分から確かめる4つの項目、返ってきた答えを書き取る欄をまとめます。読み終えると、独立3ヶ月前の時点で、誰に何をどこまで頼むかを自分の言葉で決められる状態になります。制作費の相場と、公開後に数字が動き始めるまでの期間は扱いません。

なぜ独立3ヶ月前に「誰に頼むか」を決めるのか

ここでは、制作会社を決める作業を独立準備のどの時点に置くかが決まります。この判断が遅れると、後ろの準備がまとめて開業日に寄ります。理由は3つあります。

理由1: 開業日が動かせない締切になる

独立準備のタスクの多くは、多少前後しても取り返しがつきます。サイトの発注は違います。発注してから公開までには、原稿・写真・構築・確認の工程が順番に入るため、決めるのが遅れた分がそのまま公開日の遅れになります。開業日に公開されている状態を作るには、逆算して発注先を決める時点を先に置くのが現実的です。

面談そのものにも日数がかかります。問い合わせから日程が決まるまでに数日、提案書が届くまでにさらに数日。2社から3社に声をかけるなら、その往復を見込んでおく必要があります。

理由2: 頼む範囲が決まらないと、次の準備が止まる

次の記事で扱うドメインの取得は、誰が取るのか・誰の名義にするのかが決まっていないと着手できません。サーバーの契約も同じです。制作会社に任せるのか、自分で取って制作会社に渡すのかで、独立2ヶ月前にやることが変わります。

つまりこの段の判断は、そのあとの準備の手順表を確定させる作業でもあります。

理由3: 開業後に自分で手を動かす範囲は、発注のときに決まる

「専門サイト vs 事務所サイト」で確認したとおり、独立時のサイトは、まず事務所サイトを作り、扱う分野が固まってから専門サイトを足していく形で育てます。この段階的な進め方をとる以上、開業後にページや記事を足していく作業が続きます

その作業を毎回外に頼むのか、自分でもできる形にしておくのかは、発注の時点でほぼ決まってしまいます。公開してから相談するのでは、作り方をやり直すことになります。

開業日から逆算した面談と発注の進め方

時期の目安は次のとおりです。準備の進み具合で前後してかまいませんが、順番は入れ替えないでください。

時期 やること 完了の目安
独立3ヶ月前の前半 外に頼む範囲と自分で持つ範囲を切り分ける。問い合わせ先を2〜3社に絞る 切り分けの一覧が1枚できている
独立3ヶ月前の後半 面談。4つの確認項目を聞き、その場で書き取る 会社ごとに書き取った紙がそろっている
独立2ヶ月半前 提案書を受け取り、同じ項目の並びに写し直して見比べる 発注先が決まっている
独立2ヶ月前 ドメインとサーバーを自分の名義で用意し、制作に入ってもらう 名義と権限が自分の側にある
独立1ヶ月前 原稿・写真を渡し、表示を確認する 各ページの中身が入っている
開業日 公開。相談の入口を記録する欄を使い始める 記録の欄が使える状態になっている

面談の前に、外に頼む範囲と自分で持つ範囲を分ける

ここでは、面談に持って行く1枚を作ります。この1枚があるかないかで、面談で聞ける中身が変わります。

なぜ面談の前に分けておくのか

範囲を決めずに面談に行くと、話は先方の提案の形に沿って進みます。提案の形は会社ごとに違うので、複数社の話を並べようとしても、同じものを比べていない状態になります。先に自分の側で項目を決めておけば、どの会社の話も同じ欄に落とせます。

もう一つの理由は時間です。何をどこまで頼むかが決まっていないと、面談のたびに一から説明することになります。開業準備と並行して動く時期に、この繰り返しは重くのしかかります。

切り分けの一覧を作る

作業を書き出して、外に頼むか、自分で持つか、まだ決められないかの3つに分けます。まだ決められないものは、空欄のままで問題ありません。その空欄こそ、面談で聞く材料になります。

作業 外に頼む 自分で持つ 備考
ドメインの取得と管理 名義は自分に置く(次の記事で扱います)
サーバーの契約 契約者が誰になるかを面談で確認
サイトの設計と構築
固定ページの原稿 弁護士紹介・料金は自分で書く
弁護士の写真・事務所の写真 撮影の手配を含むかを確認
お問い合わせフォームの設置 届く先の設定まで含むか
開業後の記事の追加 自分でも追加できる形にするか
公開後の不具合の対応 連絡先と対応の範囲を確認

空欄をそのまま面談に持って行く

埋まらなかった欄は、面談で「これはどちらになりますか」と尋ねる項目です。ここを埋める過程で、会社ごとに引き受ける範囲が違うことがはっきりします。同じ「サイト制作」という言葉でも、公開までを指す会社と、公開後の更新まで含める会社があります。

面談の前にそろえるもの

  • 扱う分野と、まず事務所サイトから始めるという方針を1行で書いたメモ
  • 外に頼む範囲と自分で持つ範囲の切り分けの一覧(この節の表)
  • 面談で聞く質問を書いた紙(会社ごとに1枚)
  • 答えを書き取る欄(実績・成果・作り方・開業後の4枚)
  • 開業予定日と、サイトを公開したい日

面談で口に出す質問 — 先方が先に見せるのは事例集

ここでは、面談で何を口に出すかが決まります。手がかりになる一次情報が1つあります。

Google が挙げている、業者の候補と面談するときの質問

Google は、検索からの集客を請け負う業者(SEO業者)の候補と面談する場面で聞くこととして、次の質問を挙げています。

過去の作業のサンプルと成功事例をいくつか紹介してもらえるか。Google検索の基本事項(旧称:ウェブマスター向けガイドライン)に準拠しているか。期待される結果とその時期、成果はどのように測定するのか。同業種でどのような実績があるか。該当する国や地域でどのような実績があるか。

ここで押さえておきたいのは、この文言を言っているのは Google であり、想定されている場面は SEO業者の候補との面談だということです。サイトを作るところから公開後の集客までをまとめて請け負う制作会社との面談にこれを当てるのは、そのままの適用ではなく読み替えになります。この読み替えは、ウェブ集客の支援をする側からの判断です。Google が制作会社について述べているわけではありません。

この5つが与えるもの、与えないもの

ここに並んでいるのは面談で聞く質問です。どう答えれば良い会社なのかという判定の基準は、この文言からは出てきません。5つを尋ねれば良い会社が選べる、という性質のものでもありません。

5つが与えるのは、面談の場で口に出す質問の一覧までです。聞いた答えをどの単位で書き取り、何と何を並べるかは、こちらで決めることになります。

先方から出てくるものと、自分から聞くもの

面談の場で先方が資料として最初に出してくるのは、このうち1つ目にあたるもの、つまり過去の作業のサンプルと成功事例です。制作実績の件数、事例集、作ったサイトのURLの一覧といった形で出てきます。複数社の資料が似て見えるのは、どの会社も同じ1つ目に答えているからだ、というのがここでの見方になります。

どの項目が先に出てくるかについて、調べた数字があるわけではありません。ウェブ集客の支援をする側から見た見立てです。ただ、面談の資料が似ていると感じるなら、残りの4つを自分から聞いてみると、答えの出方が変わります。

面談で確かめる項目 面談で出てきやすいか 自分から聞かないと分からないこと
過去の作業のサンプルと成功事例をいくつか紹介してもらえるか 資料として先に出てくる 事例の中身の内訳
Google検索の基本事項(旧称: ウェブマスター向けガイドライン)に準拠しているか 話に出ないことが多い 誰が答えるのか、制作の工程のどこで確認するのか
期待される結果とその時期、成果はどのように測定するのか 「成果が出ます」で止まりやすい 何を数え、誰がどう測り、いつ何が届くのか
同業種でどのような実績があるか 実績の総数として示される そのうち弁護士の事務所のサイトはどれか
該当する国や地域でどのような実績があるか 全国の件数として示される 自分が開業する地域にあたるものはどれか

この記事で自分から確かめる項目は4つです。実績の中身・成果の測り方・作り方・開業後に自分で動かせるかで、以降の4つの節がそれぞれに対応します。前の3つは引用した質問に対応します。4つ目は引用した質問から出てくるものではなく、開業日までにサイトを立ち上げる側の事情から、発信者の判断で足す確認です。

確認項目1 実績の中身 — 弁護士の事務所を担当した実績か、開業する地域の実績か

ここでは、見せられた事例集と実績の件数を、自分の判断材料に変える聞き方が身につきます。

「同業種」と「該当する国や地域」を自分に当てはめる

引用した質問のうち「同業種でどのような実績があるか」「該当する国や地域でどのような実績があるか」の2つは、実績の総数ではなく、実績の中身を聞くものです。先方が出してくる事例集は1つ目の質問への答えで、この2つはそこに重ねて聞く形になります。

読者の側の当てはめとしては、「同業種」は弁護士、「該当する国や地域」は自分が事務所を開く地域と読むことになります。この当てはめは、Google の案内が弁護士について述べているものではなく、自分の開業に引き寄せた読み方です。引用の文言に弁護士のことは書かれていません。

面談での聞き方 — 総数ではなく中身を聞く

この2つを分けて聞くと、まとめて示された実績が、弁護士の事務所を担当したものなのか、自分が開業する地域と条件の近いものなのかを、別々に書き取れるようになります。面談では、次のように尋ねます。

  • 「見せていただいた事例のうち、弁護士の事務所のものはどれですか」
  • 「そのうち、私が事務所を開く地域に近いところの事例はありますか」
  • 「その事例では、御社が担当されたのはどこまでですか」

答えを書き取る欄 — 面談1社につき1枚

返ってきた答えは、次の欄に分けて記録します。面談ごとに1枚使い、社名を上に書いておくと、あとで並べられます。

事例 弁護士の事務所か 地域 先方が担当した範囲 いま見られるか
(事例名を書く) はい/いいえ (地域を書く) 制作まで/公開後の更新も/記事の追加も はい/いいえ/未確認

この形で書き取ると、実績の件数の多さが、そのままでは自分の判断材料にならないことが見えてきます。総数のうち弁護士の事務所が何件かは、聞かなければ分かりません。地域についても同じで、全国での件数と、自分が開業する地域での件数は、別のものになります。

事例の名前を出せないと言われた場合に聞く4つ

事例の名前を出せない、と言われることもあります。守秘の取り決めがある場合や、公開前の案件が含まれる場合です。そのときは、事務所名まで聞く必要はありません。次の4つだけを聞けば、上の欄はおおむね埋まります。

  • 分野(相続か、交通事故か、企業向けか)
  • 地域の規模(都市部か、それ以外か)
  • 先方が担当した範囲(作るところまでか、その後も続いたか)
  • そのサイトが動き出した時期

名前を出せないことを断ったうえで、この4つに答えてもらえるかどうかで、答えの具体さは分かれます。

なお、ここで確かめられるのは「弁護士の事務所のサイトを作った経験があるか」「自分が開業する地域に近い経験があるか」までです。その経験があることが、これから作る自分のサイトの集客につながるかどうかまでは、事例集からは分かりません。そこは次の確認項目に移ります。

確認項目2 成果の測り方 — 何をどの数字で測るのかを発注の前に決める

ここでは、「成果が出ます」という説明を、後から確かめられる形に変える聞き方が身につきます。

引用した一文を、そのまま口に出す

引用した質問のうち「期待される結果とその時期、成果はどのように測定するのか」は、過去ではなくこれからのことを聞く項目です。面談では、この一文をほぼそのまま口に出して差し支えありません。

  • 「期待される結果と、その時期はどのくらいで見ていますか」
  • 「成果は、どのように測定されますか」

返ってきた答えを4つの観点に分けて書き取る

返ってきた答えは、そのまま書き取るだけでは、後で各社を並べたときに読み比べられません。次の4つに分けて記録します。

分ける観点 書き取ること 記入欄
測る対象 何を数えるのか(表示された回数/サイトを見た人の数/問い合わせの数/相談の申し込みの数)
測り方 誰が、どの画面から数えるのか。自分でも同じ数字を見られるか
報告の形 どの間隔で、何が届くのか。書面か、口頭か、画面の共有か
時期の言い方 一点で言い切ったか、範囲で示したか。何をもって「その時期」とするのか

時期については、先方が挙げた月数をそのまま書き取ります。ここで一般に言われている目安を自分で当てはめてしまうと、先方の答えとその目安との差が見えなくなります。書き取るのは相手が言った言葉です。

発注を決める前に、自分の側から当てる5つの見方

書き取った答えは、発注を決める前に、自分の側で次の観点に当てて見ます。

  1. 測る対象が、開業後に来る相談の入口とつながっているか。 サイトを見た人の数だけで報告される形になっていると、相談の申し込みが増えたかどうかとは別の数字を追うことになります
  2. 測り方を自分でも確かめられるか。 数字の出所になる画面を見せてもらえるか、開業後に自分に権限をもらえるかを聞いておきます
  3. 報告の間隔と、届くものの中身が決まっているか。 「ご報告します」だけで、間隔も形式も決まっていない場合は、その場で決めてもらいます
  4. 時期を一点で言い切らず、範囲で示しているか。 言い切る答えが返ってきた場合は、何を根拠にその時期なのかを続けて聞きます
  5. 測った結果が思わしくなかったときに何をするかまで答えているか。 次に何を変えるのか、その作業は任せる範囲に入っているのか、追加で費用がかかるのかを聞きます

開業日から記録を始められるようにしておく

先方の測り方とは別に、自分の側でも相談の入口を記録できるようにしておくことをおすすめします。先方から届く報告と、自分の手元の記録を同じ対象で見比べられるようにするためです。開業前のこの段階で作るのは記録そのものではなく、記録する欄と、誰がいつ書くかの決めごとです。

記録する項目 中身
相談の申し込みの入口 サイト経由/紹介/ポータル経由/その他のどれか
サイト経由の場合に見ていたページ 分野のページ/料金のページ/弁護士の紹介ページ/記事
問い合わせの手段 電話/フォーム/メール
記録を付ける人と時点 誰が、いつ(受けたときか、面談の後か)付けるか

表計算のファイルで足ります。開業したばかりの時期は手が足りませんから、最初は入口の区別と日付の2列だけでもかまいません。始めるときに手を広げすぎると続きません。電話を受けたときに「サイトを見て」と言われたかどうかを記録する、という程度から始められます。

欄を用意しないまま公開すると、成果の報告を受けても、手元の実感と照らし合わせる先がありません。

確認項目3 作り方 — 検索の基本事項への準拠を工程と担当まで聞く

ここでは、まだ形のないサイトの作り方について、面談の場で確かめられることが分かります。

言い換えずに、そのまま尋ねる

引用した質問のうち「Google検索の基本事項(旧称: ウェブマスター向けガイドライン)に準拠しているか」は、実績でも成果でもなく、これから作るサイトの作り方についての質問です。この一文は、面談でそのまま読み上げて尋ねられます。言い換えずに聞くほうが、先方も答えやすくなります。

  • 「Google検索の基本事項に準拠して作られていますか」

基本事項そのものは Google が公開している文書で、内容は改訂されます。面談の場で読み合わせる必要はありません。ここで確かめるのは、先方がその文書を見ながら作っているかどうかと、確認する工程と担当が決まっているかどうかです。

答えを4つに分けて記録する

返ってきた答えは、次の項目に分けて記録します。

  • 答えたのは、営業の担当者か、制作の担当者か
  • 制作の工程のどこで確認するのか(設計の段階か、公開の直前か、公開の後か)
  • 確認した結果を誰に報告するのか。自分の側に届く形になっているか
  • この答えを提案書や見積書に書いてもらえるか

答えたのが営業の担当者だった場合は、そこで止めずに「制作を担当される方にも同じことを確認できますか」と続けます。面談の場に制作の担当者が同席していないことは珍しくありません。後日でかまわないので、誰が答えたのかを名前で書き取っておくと、公開した後に聞き直すときの相手が決まります。

提案書に一行入れてもらえるかで、答えが分かれる

4つのうち最後の項目が、この節でいちばん効きます。口頭の「もちろん準拠しています」は、後から確かめようがありません。提案書に一行入れてもらえるかどうかを聞くと、その場で答えが分かれることがあります。書けるという会社と、書面には書けないという会社が出るためです。

どちらが良いという話ではありません。書いてもらえた会社については、公開した後に「どこで確認しましたか」と聞き直す先が残る、ということです。

作り方を聞かずに任せると、公開しても検索から人が来ないときに、原因が制作側にあるのか自分の載せた中身にあるのかを切り分けにくくなります。工程と担当を先に書き取っておけば、そのときに開く先が決まります。

確認項目4 開業後に自分で動かせるか — 名義・権限・記事の追加

ここでは、引用した質問とは別に、独立準備中だからこそ足す確認を扱います。この項目は Google の文言から導いたものではありません。開業日までにサイトを立ち上げ、その後も一人で育てていく事情から、発信者の判断で置くものです。

名義と権限を、契約の前に確かめる

サイトは、公開したら終わりではありません。開業後にページを足し、記事を書き、いずれ専門サイトを追加していきます。そのとき手が止まる原因になりやすいのが、名義と権限がどちらの側にあるかです。面談では次のように尋ねます。

  • 「ドメインは、どちらの名義で取得することになりますか」
  • 「サーバーの契約者は、どちらになりますか」
  • 「サイトの管理画面には、私もログインできますか。権限はどの範囲になりますか」
  • 「解約する場合、サイトのデータと原稿は引き取れますか」

ドメインについては、次の記事「ドメインの決め方とブランディングの基礎」で自分の名義で取る前提の手順を扱います。この面談の時点で名義を自分に置くと決めておけば、その手順にそのまま入れます。

記事を自分でも追加できる形になっているか

扱う分野が固まってから専門サイトを足す、という進め方をとる以上、開業後に中身を足していく作業は続きます。その都度すべてを外に頼む形にすると、書きたいときに出せない状態になりがちです。面談では、次の3つを確かめます。

  • ページや記事を自分で追加できる仕組みになっているか
  • 追加の操作について、公開のときに説明を受けられるか
  • 自分で触れる範囲と、触ってはいけない範囲がどこで分かれるか

書き取る欄

確かめること 書き取ること 記入欄
ドメインの名義 自分/先方/未定
サーバーの契約者 自分/先方/未定
管理画面の権限 もらえる/もらえない/範囲を限定
記事の追加 自分でできる/依頼が必要/どちらも可
終了するときの引き取り データと原稿を引き取れるか

この欄が埋まると、外に頼む範囲を分けた一覧の空欄も、あわせて埋まります。

各社の答えが分かれなかったときの決め方

ここでは、4つを聞いても差が出なかった場合に、何を根拠に決めるかが分かります。

差が出なかった項目だけ、もう一段細かく聞き直す

4つを順に聞いても、複数の会社が同じように答えることがあります。どこも弁護士の事務所の事例を持っていて、成果の測り方も似た説明をし、基本事項についても準拠していると答える、という場合です。

そこで印象で決めてしまうと、選んだ理由が面談の雰囲気だけになります。決める前に、次の3つを順にやります。

  1. 差が出なかった項目に絞って、もう一度聞く。 全部を聞き直す必要はありません。同じ答えが返ってきた項目だけを取り出し、一段細かく尋ねます。成果の測り方が似ていたなら、「その数字は、どの画面のどの項目を見た数ですか」「私の側からも同じ数字を見られますか」まで聞きます
  2. 任せる範囲と成果の測り方を、提案書に書いてもらう。 口頭で聞いた内容を、書面に落としてもらう依頼です。「面談でうかがった内容を、提案書に項目として入れていただけますか」と伝えます
  3. 各社の提案書を、同じ項目の並びに置き換えて見比べる。 会社ごとに書式が違うので、そのままでは並びません。自分の側で項目の順を決めて写し直します

提案書に書いてもらう項目

提案書に入れてもらう項目は、次のとおりです。会社ごとに1枚ずつ作れば、そのまま比較の材料になります。

書いてもらう項目 中身
任せる範囲 作るところまでか、公開後の更新も含むか、記事の追加も含むか
範囲の外になること 追加で費用がかかる作業はどれか(金額ではなく、項目として)
成果の測る対象 何を数えるのか
成果の測り方 誰が、どこから数えるのか。自分の側が同じ数字を見られるか
報告の形と間隔 何が、どの間隔で届くのか
検索の基本事項の確認 制作の工程のどこで、誰が確認するのか
名義と権限 ドメイン・サーバー・管理画面が、それぞれどちらの側にあるか
公開の予定日 開業日に間に合う日程が書かれているか
窓口 公開した後に聞くときの連絡先は誰か

それでも並ばないとき

同じ項目で書かれた提案書が2枚、3枚と並べば、その場の印象ではなく、書かれた中身で決められます。差が出なければ、それはそれで一つの結果です。そのときは、範囲と報告の形がいちばん具体的に書かれている会社を選ぶ、という決め方ができます。

この一式は選んだ後にも残ります。公開して数か月たったときに「提案書ではこの間隔で報告と書かれていましたが」と聞ける先があるかどうかは、契約の前に書いてもらったかどうかで決まります。

よくある失敗と注意点

制作会社を決める段でつまずきやすいところを、5つ挙げます。

  • 失敗1: 開業日の直前に問い合わせる — 日程調整・提案書の受け取り・制作の工程がすべて開業日に寄ります。逆算して独立3ヶ月前には面談に入ります
  • 失敗2: 実績の件数だけを見比べる — 件数は、引用した質問の1つ目に対する答えです。どの会社も同じものを出してくるため、そこだけを比べても差は出にくくなります
  • 失敗3: 範囲を決めずに面談に行く — 話が先方の提案の形に沿って進み、複数社の話を同じ欄に落とせなくなります。切り分けの一覧を先に作ります
  • 失敗4: 名義と権限を確かめないまま契約する — 開業後に記事を足そうとしたときや、担当を替えたいときに手が止まります。ドメイン・サーバー・管理画面の3つは、面談の場で確かめます
  • 失敗5: 口頭の答えを書面に残さない — 時間がたつと会社ごとの記憶が混ざります。その場で書き取り、提案書にも項目として入れてもらいます

もう一つ、注意点があります。この記事で扱った4つは、面談で確かめる項目であって、良い会社の要件ではありません。4つを聞けば正しい会社が選べる、という性質のものではなく、答えを同じ欄に並べて自分で決めるための材料です。どこを重く見るかは、扱うと決めた分野と、開業後に自分でどこまで手を動かすつもりかによって変わります。

まとめ — 次のステップ

この記事の要点

  • 面談で見せられる実績の件数と事例集は、Google が業者との面談の質問として並べたうちの1つ目への答え。資料が似て見えるのは、どこも同じ質問に答えているため
  • この文言を言っているのは Google で、想定されている場面はSEO業者の候補との面談。制作会社に当てるのは、ウェブ集客の支援をする側からの読み替え
  • 面談の前に、外に頼む範囲と自分で持つ範囲を1枚に切り分ける。埋まらない欄が、そのまま面談で聞く項目になる
  • 自分から確かめるのは実績の中身・成果の測り方・作り方・開業後に自分で動かせるかの4つ
  • 実績は弁護士の事務所を担当したものか、開業する地域のものかを分けて書き取る
  • 成果は何をどの数字で測るのかを発注の前に決め、開業日から記録を始められる欄を用意しておく
  • 作り方は工程と担当まで聞き、提案書に残してもらう
  • 名義と権限(ドメイン・サーバー・管理画面)は、契約の前に自分の側に置くと決めておく
  • 引用が与えるのは面談で口に出す質問の一覧まで。書き取る欄は自分で作る。どう答えれば良い会社なのかという正解は、ここからは出てこない

次のステップ

誰に何をどこまで頼むかが決まったら、次は自分の名義で押さえるものを決める段です。「ドメインの決め方とブランディングの基礎」では、事務所サイト用と将来の専門サイト用のドメインの決め方と取得の手順、一人で始める事務所のブランディングの最低限を扱います。この記事で「ドメインの名義は自分」と書き取った欄が、そのまま次の入口になります。

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