開業直後の弁護士がSNSで相談につながる投稿と同業に届く投稿を見分ける3か所

この記事のポイント

同期がSNSで発信していて、反応も付いている。ただ、そこから相談が来ているようには見えない。反応が増えることと、相談が来ることは同じ出来事ではありません。分かれるのは投稿の上手さではなく、その投稿が誰に届いているか・投稿から相談の入り口までの道がつながっているか・その道を通って来た人を記録しているかの3か所です。開業直後はつながりが同業に寄っています。それ自体は紹介の経路として働きますが、相談を考えている人から直接連絡が来る経路とは、届く相手も、その後にたどる道も違います。

開業して、SNSのアカウントを作りました。あるいは、前から持っているアカウントを事務所の名前で使い始めました。同期や修習で一緒だった弁護士が毎日のように投稿していて、反応も付いています。自分も始めたほうがいいのか。始めるとして何を書けばいいのか。反応が増えれば相談も増えるのか。フォロワーを増やすのが先なのか。

反応が増えることと、相談が来ることは、同じ出来事ではありません。SNSから相談が来るかどうかは、投稿の文章が上手いかどうかでは分かれません。分かれるのは、その投稿が誰に届いているか、投稿から相談の入り口までの道がつながっているか、その道を通って来た人を記録しているかの3か所です。どれも、自分の投稿と、自分のプロフィールと、自分の相談の記録を見れば確かめられます。

先に断っておきます。この記事では、フォロワーが何人いれば相談が来るのか、週に何回投稿すればよいのか、どのSNSにどの年代の人が多いのかといった水準を示しません。示せる根拠を持っていないからです。SNSを始めると相談がどれだけ増えるか、始めてからどれくらいで相談につながるかも、同じ理由で書きません。代わりに置くのは、自分の投稿と自分の記録から確かめられる観点だけです。

なぜ開業直後に、届く相手を先に確かめるのか

理由は3つあります。

理由1: 開業直後は、つながりが同業に寄っている

これまでの仕事で知り合ったのは、同じ事務所の弁護士、相手方の代理人、同期、修習で一緒だった人、他士業の方です。アカウントをフォローしている相手も、その顔ぶれになりやすい時期です。これは良し悪しの話ではなく、開業直後の事実です。

理由2: 投稿を増やす前に見たほうが、手戻りが少ない

届く相手のところで止まっているなら、その先の道をどれだけ整えても相談は来ません。本数を増やすのは、止まっている場所が本数だと分かってからです。

理由3: 記録は、始めた日からしか溜まらない

SNSを見て来た相談があっても、何を見て来られたかを聞いていなければ、紹介や検索に混ざって見えなくなります。開業直後なら、最初の1件から記録できます。「広告費を相談件数で見る」で始めた記録に、SNSの欄を足すだけで済みます。

分かれるのは投稿の上手さではない — 届く相手・道・記録の3か所

文章が読みやすいこと、話題が的確なことは、その投稿が届いた相手にとっては意味を持ちます。ただし、その投稿がいま誰に届いているかは、文章を読み返しても分かりません。投稿がどこまで広がるかの仕組みはSNSごとに違い、こちらから説明できるものを持っていません。

代わりに、確かめる手立てのほうはあります。直近の投稿に反応した相手のアカウントを、順に開いてみることです。開いた先が同業の弁護士や士業の方ばかりであれば、その投稿がいま届いているのは、その人たちです。文章の良し悪しとは別に、この一点は自分の画面で確かめられます。

分かれ目は次の3か所にあります。

分かれ目 何を見るか
届く相手 その投稿が、同業に届いているのか、相談を考えている人に届いているのか
投稿から相談までの道 投稿を見た人が、誰が書いたのかを確かめ、事務所にたどり着き、相談の入り口に着くまでのつながり
通って来た人の記録 その道を通って相談に来た人を、経路として残しているかどうか

この3か所は上流から順に効きます。届く相手が同業だけであれば、その先の道がどれだけ整っていても相談は来ません。反対に、届く相手が合っていても道が途中で切れていれば、そこで止まります。そして道が通っていても記録がなければ、SNSが効いているのかどうかを、後から判断できません。

つながっていない場合に起きていること

つながらない型 そのときに起きていること 自分で見分ける手がかり
投稿が同業にだけ届いている 反応は付くが、反応しているのは同じ立場の人。相談を考えている人の目には触れていない 直近の投稿に反応した相手のアカウントを開く。弁護士・士業・同じ業界の人ばかりになっていないか
届いてはいるが、誰が書いているかが分からない 投稿の内容は届いたが、書き手が弁護士だと分からない、事務所も分からないため、相談する相手として結びつかない 自分のプロフィールを開き、弁護士であること・事務所名・所在地・扱っている分野が読み取れるか
プロフィールまでは来るが、その先の入り口がない プロフィールから先に進む場所がない、または進んだ先が投稿の話題と対応していないページになっている プロフィールのリンクを自分でたどり、投稿で扱った話題に対応するページに着くか
入り口までは来ているが、記録していない 実際にはSNSを見て来た相談があるのに、何を見て来たかを聞いていないため、紹介や検索に混ざって見えなくなっている 相談の記録に、何を見て来られたかを書く欄があるか
その商圏と分野の相談を考えている人がそこにいるかを確かめていない 発信は続いているが、その分野の困りごとを抱えた人がそのSNSで情報を探しているかどうかを見ないまま続けている 自分の分野の困りごとの言い方で、そのSNSの中を検索して何が出てくるかを見る

同業に届く発信と、相談を考えている人に届く発信

同じ分野の話題を書いていても、誰に向けて書いたかで、投稿は別のものになります。分かれ目は、書いている相手・使っている言葉・扱っている話題・反応の出方の4つに表れます。

観点 同業に届く発信 相談を考えている人に届く発信
誰に向けて書いているか 前提を共有している相手。説明を省いても通じる 自分の状況をどう呼べばいいかも分からない相手
使っている言葉 手続きや制度の名前、条文の呼び方、実務での言い回し 自分が置かれている状況の言い方。困っている出来事そのものの言葉
扱っている話題 新しい裁判例、運用の変化、書式や進め方の工夫、事務所の経営 相談の前に決めておくこと、相談に何を持って行けばよいか、相談した後どう進むか、どこに連絡すればよいか
反応の出方 反応が返ってきやすい。互いに見ていて、反応を返す習慣がある 反応を残さずに読んで去ることがある。自分がその立場にあることを、周りに知られたくない場合がある
その先にある経路 同業からの紹介、共同での受任 相談を考えている人からの直接の連絡

いちばん効いてくるのは、反応の出方の行

同業に向けた投稿には反応が返ってきます。相談を考えている人に向けた投稿には、反応が付かないことがあります。反応の量を手がかりにして次の投稿を決めていくと、反応が返ってくるほう、つまり同業向けのほうへ、少しずつ寄っていきます。書いている側に、寄せているつもりはありません。反応という手がかりが、そちらしか指していないからです。

SNSが相談につながらない形のうち、いちばん気づきにくいのがこれです。投稿は増え、反応も増え、手ごたえもあるのに、相談の記録は変わらない、という形になります。

どのSNSを使うかの確かめ方

どのSNSにどういう人がいるかを、こちらから示すことはしません。利用者の年代や地域を示す根拠を持っていませんし、示せたとしても、それが自分の商圏で自分の分野の相談を考えている人の姿と同じとは限りません。代わりに、自分で確かめられる観点を3つ挙げます。

  • その分野の困りごとの言い方で、そのSNSの中を検索してみる。 出てくるのが同業の発信ばかりで、困りごとを書いている人の投稿が見当たらないのであれば、その分野の相談を考えている人は、そのSNSでは探していないのかもしれません
  • 地域の話が流れているかを見る。 自分の商圏の地名を含む投稿や、地域の出来事の話が流れているかどうか。地域の相談を受ける事務所であれば、ここは効いてきます
  • すでに相談に来た方に、ふだんどこで調べたかを一言聞く。 これがいちばん確かです。自分の事務所に実際に来た方が使っている場所は、外から持ってきたどの資料よりも、自分の商圏に近い答えになります

どのSNSを使うかは、利用者の多い少ないではなく、この3つで確かめた結果と、自分が続けられるかどうかで決めるのが順当です。続けられないところで始めても、道をつなぐところまで届きません。分量の決め方は「記事に回せる分量を実測で見積もる3つの手順」と同じ考え方です。

開業直後の同業とのつながりは、それ自体が経路になる

ここははっきりさせておきます。同業に届く発信が無駄だという話ではありません。

開業直後の事務所にとって、同業とのつながりから来る紹介や、共同での受任は、それ自体が受任の経路です。前の事務所の縁、同期、修習で一緒だった人、相手方として向き合った代理人。これらは開業直後にいちばん厚い経路で、同業に読まれる発信はその経路に向いています。

ただし、届く相手も、たどる道も違う

同業からの紹介という経路 相談を考えている人から直接という経路
届く相手 弁護士・他士業 困りごとを抱えた本人
次にたどる場所 相手が電話をかけてくる、または依頼者に事務所名を伝える プロフィール、リンク先のページ、相談の入り口
自分の側で用意するもの 扱う相談と扱わない相談、連絡先。1枚のページにまとめておくと相手が渡せる 受け皿になるページと、連絡の受け方の決めごと
記録の残り方 紹介元の名前まで残せる 聞かなければ残らない

どちらをやるかを決めておかないと、前者の反応を見ながら後者を期待する形になり、いつまでも判断が付きません。同業向けに書くと決めたなら、見るのは反応の数ではなく、そこから来た紹介の件数です。相談を考えている人に向けると決めたなら、見るのはSNSを見て来たと言われた相談の件数です。どちらの経路を見ているのかを、先に決めてください。

SNSは相談の手前までしか運ばない — 相手が通る場所

投稿を見た人が、その画面のまま相談に至ることは、まずありません。あいだにいくつかの場所があり、そこを順に通ります。SNSが運べるのは、その最初の区間だけです。

相手が通る場所 そこで止まる理由 自分で確かめる方法
投稿を見る 話題が自分の困りごとと結びつかない。読んで終わり、書き手を見に行くところまで行かない 直近の投稿を、相談を考えている人の立場で読み返す。自分の状況の話だと分かるか
誰が書いたのかを見る(プロフィール) 弁護士だと分からない。事務所名・所在地がない。扱っている分野が読み取れない 自分のプロフィールを、ログアウトした状態で開いてみる
プロフィールから先へ進む(リンク先のページ) リンクがない。リンク先が事務所サイトの入り口で、投稿の話題に対応するページに行き着けない プロフィールのリンクを自分の携帯電話からたどり、何回で目的のページに着くかを見る
相談の入り口に着く 連絡の手段が一つしかない。受付の時間の外だと何もできない。いつ返事が来るかが書いていない 着いたページに、連絡の手段と、その後どうなるかが書いてあるか
実際に連絡する 何をどこまで伝えればよいかが分からない。連絡した後の流れが見えない 自分で一度、相談する側として入力してみる

止まる場所ごとに、手を入れる先が違います。投稿で止まっているなら投稿の話題の選び方の話ですが、プロフィールで止まっているなら投稿をいくら増やしても変わりません。

押さえておいたほうがよいこと

投稿を見た日に連絡する人ばかりではありません。投稿を読んだ時点では自分の話ではなかった人が、後になって困りごとが動いたときに、あの人が書いていたと思い出して探すことがあります。この形で来た場合、投稿した日と連絡が来た日は離れます。投稿した直後に相談が来たかどうかだけを見ていると、この経路は見えません。

探し直すときは、SNSの中で探すとは限りません。事務所の名前や弁護士の名前を覚えていて、検索で事務所サイトを開いて連絡する、という来方があります。この場合、事務所の側から見える経路は検索です。SNSが効いていたのに、記録の上では別の経路になります。相談を受けたときに、何を見て来られたかを一言うかがう必要があるのは、このためです。

最後に、SNSの中で直接やり取りをするかどうかについて。投稿への返信や、ダイレクトメッセージで相談のやり取りをどこまで受けるかは、この記事では判断しません。事務所として受け口をどこに置くかを先に決めておき、SNSの側には「相談はこちらで受けます」という行き先だけを置いておく、という形にしておくと、判断を都度しなくて済みます。

自分の投稿がどちらに向いているかを確かめる5つの手順

ここまでの3か所を、自分の発信に当てて確かめます。順番は上流からです。

手順1 直近の投稿をいくつか開いて、誰に向けた言葉かを見る。 相談を考えている人の立場で読み返して、自分の状況の話だと分かるか。手続きの名前から始まっていないか。前提を知っている人でないと読み進められない書き方になっていないか。

手順2 反応した相手のアカウントを開く。 同業ばかりであれば、届く相手のところで止まっています。ここで止まっているなら、以降の手順は後回しでかまいません。まず、どちらの経路を見るのかを決め直すのが先です。

手順3 自分の携帯電話で、投稿から相談の入り口までを実際にたどる。 事務所のパソコンではなく、ログアウトした状態の携帯電話でたどってください。自分が見る画面と、初めて見る人の画面は違います。たどりながら、次の項目を確かめます。

  • プロフィールに、弁護士であること・事務所名・所在地・扱っている分野が書いてあるか。 投稿だけを見て来た人には、ここが最初の名刺になります
  • プロフィールから先に進むリンクがあるか。 リンク先が、投稿で扱っている話題に対応するページになっているか
  • そのページから、相談の入り口に進めるか。 何回たどれば着くか。途中で別の話に飛ばされないか
  • 入り口に、連絡の手段と、その後どうなるかが書いてあるか。 連絡する手段が一つだけになっていないか
  • SNSからの連絡をどこで受けるかが、事務所の中で決まっているか。 返信やダイレクトメッセージが来たときに、どこへ案内するかを決めてあるか
  • 発信してよい内容の範囲を、所属弁護士会に確認したか。 何をどこまで書いてよいかの判断は、この記事では扱いません。扱っている事件のことや、費用や実績の書き方など、判断に迷うものは、書く前に所属弁護士会に確認してください

手順4 欠けている場所を1つに絞る。 たどってみると、たいてい複数の場所が気になります。それでも、上流から見て最初に止まっている場所を1つだけ選んでください。上流が塞がっているうちは、下流を直しても結果は変わりませんし、同時に複数を変えると、後でどれが効いたのかが分からなくなります。

手順5 記録を始める。 相談を受けたときに、何を見て来られたかを一言うかがって、記録に残します。ここまでの手順は、記録がなければ、直したことが効いたかどうかを確かめられません。

SNSを見て来られたと言われた相談 どの話題の投稿だったか 受任に至ったか

この表に、こちらから数字は入れません。何件あればよいか、どれくらいの期間で埋まるかを示せる根拠を持っていないからです。埋めるのは自分の相談の記録からです。空欄が続くのであれば、それも一つの結果で、上の3か所のどこかがまだ塞がっているか、その分野の相談を考えている人がそこにいないか、のどちらかを示しています。

続けるか、やめるかの判断も、この記録が溜まってからで足ります。何か月やれば結論が出るという言い方はしません。判断の材料になるのは経過した期間ではなく、上流から順に見て、3か所のどこも塞がっていない状態で、どれだけ記録が付いたかのほうです。手を入れる前の期間をいくら数えても、材料は増えません。

よくある失敗と注意点

  • 失敗1: 反応の数を手がかりに次の投稿を決める — 反応が返ってくる同業向けのほうへ、少しずつ寄っていきます。投稿は増え、手ごたえも増え、相談の記録は変わりません
  • 失敗2: 止まっている場所を見ずに本数を増やす — プロフィールで止まっているなら、投稿をいくら増やしても変わりません
  • 失敗3: 事務所のパソコンでプロフィールを確かめる — 自分が見る画面と、初めて見る人の画面は違います。ログアウトした携帯電話でたどってください
  • 失敗4: 経路を聞かないまま続ける — SNSを見て来た相談があっても、紹介や検索に混ざって見えなくなります。SNSで名前を知って検索で戻ってきた人は、記録の上では検索になります
  • 失敗5: 欠けている場所を同時に複数直す — 後でどれが効いたのかが分かりません。上流から1つだけ選んでください

もう一つ、注意点があります。発信してよい内容の範囲は、この記事では扱いません。扱っている事件のこと、費用や実績の書き方など、判断に迷うものは、書く前に所属弁護士会に確認してください。

まとめ — 次のステップ

この記事の要点

  • SNSから相談が来るかどうかは投稿の上手さでは分かれない。分かれるのは、届く相手・投稿から相談までの道・通った人の記録の3か所
  • 3か所は上流から順に効く。届く相手が同業だけなら、その先をどれだけ整えても相談は来ない
  • 投稿がどこまで広がるかの仕組みはこちらから説明できるものを持っていない。代わりに、反応した相手のアカウントを順に開けば、いま誰に届いているかは自分の画面で分かる
  • いちばん気づきにくいのは、反応の量を手がかりにすると同業向けへ寄っていくこと。投稿も反応も手ごたえも増えるのに、相談の記録だけが変わらない
  • 同業に届く発信は無駄ではない。開業直後にいちばん厚い、同業からの紹介という経路に向いた発信。ただし相談を考えている人から直接連絡が来る経路とは、届く相手も道も記録の残り方も違う
  • どちらの経路を見るのかを先に決める。決めないと、前者の反応を見ながら後者を期待する形になる
  • どのSNSを使うかは、利用者の多い少ないではなく3つの確かめ方(分野の言葉で検索・地域の話が流れているか・来た方に聞く)と、続けられるかで決める
  • SNSが運べるのは相談の手前まで。投稿→プロフィール→リンク先→相談の入り口→連絡の5か所を、ログアウトした携帯電話でたどる
  • 投稿を見た日に連絡する人ばかりではなく、探し直すときは検索で戻ってくることがある。だから経路を一言うかがう必要がある
  • 欠けている場所は上流から1つだけ選ぶ。続けるかの判断は、3か所が塞がっていない状態でどれだけ記録が付いたかで決める

次のステップ

ここまでで、事務所の側の記録が一通り動き出しました。次は「効果測定の始め方」で、ツールの側から数える仕組みに進みます。サイトに来た方の数と、フォームからの問い合わせを数える形を扱います。

この記事で作った表は、そのまま次の段で使えます。ツールの側から出る数と、相談を受けたときにうかがって残した記録は、別々に数えたものなので突き合わせられます。SNSで名前を知って検索で戻ってきた人は、ツールの側では検索に入り、相談の記録の側ではSNSと答えられることがあります。この差が出ること自体が、経路の重なりを示しています。

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