独立前の弁護士がホームページの費用を1年あたりに直す4つの手順

この記事のポイント

サイトにいくらかけるかは、開業前に決められる部分と、開業してからでないと決められない部分に分かれます。決められるのは出ていく側です。初期費用を自分で決めた年数で割り、続く費用と自分が使う時間を足すと、どの見積もりも1年あたりという同じ単位で並びます。決められないのは入ってくる側で、その費用に届くまでに何件の相談が要るかは、記録がそろう開業後に回します。独立6ヶ月前のこの段階で、見積もりを受け取ったその場で使える表が1枚できます。

サイトにいくらかけるのか。開業準備で出ていくものを書き出していくと、この欄だけが決まらない。事務所を構える費用も、什器も、書類や会計の道具も、調べれば見当が付く。サイトだけは、頼めば見積もりは出るはずだが、その額が高いのか安いのかを測る物差しがない。相場を調べてもみたが、独立したばかりの一人の事務所に当てはまる数字なのかは読み取れない。

ここで手が止まるのは、判断に要る材料の半分が、まだ手元にないためです。費用が見合うかどうかは、出ていく側と入ってくる側の両方がそろって初めて計算できます。開業前に確定できるのは出ていく側だけで、入ってくる側は自分の事務所の記録がないと出せません。この2つを分けずに考えると、根拠のない見込みで入ってくる側を埋めることになります。

この記事では、まず開業前に決められることと決められないことを分け、そのうえで決められる側を4つの手順にします。読み終えると、独立6ヶ月前の時点で、制作会社から見積もりを受け取ったその場で書き写せる表を1枚持てる状態になります。制作費や保守費の相場、初期費用を何年で見るかの目安、開業してから相談が何件来るかの見込みは扱いません。いずれも示せる根拠を持っていないためです。

なぜ見積もりが届く前に、費用の見方を決めておくのか

ここでは、この作業を独立準備のどの時点に置くかが決まります。「専門サイト vs 事務所サイト」でまず事務所サイトから始めると決めたので、次は、そのサイトにどれだけ配分するかを決める段です。面談は先の話ですが、費用の見方はその前に決めておくほうが進めやすくなります。理由は3つあります。

理由1: 見積もりが届いてから考えると、比べる形が先方の項目立てになる

見積書は会社ごとに項目立てが違います。届いてから比べ方を考え始めると、最初に開いた見積書の項目立てが、そのまま比べる形になってしまいます。2通目が別の形で書かれていれば、並べたつもりで別のものを見ることになります。

先に自分の側で項目を決めておけば、どの見積書もその欄に落とせます。項目を決めるのに、見積もりが手元にある必要はありません。

理由2: サイトの費用は、開業資金の配分の一つとして決まる

サイトにいくらかけるかは、サイト単体では決まりません。開業準備で出ていくものはほかにもあり、どれにどれだけ回すかという配分の中で決まります。配分を考えるには、サイトの費用も他の項目と並べられる形になっている必要があります。

見積書に書かれている額は、そのままでは並びません。初期費用は開業のときに一度出ていき、保守やサーバーの費用はその後も続きます。性質の違うものが1枚に混ざっているためです。

理由3: いま決められることと、後で決まることを、先に分けられる

独立準備中は、決まっていないことが多く残っています。事務所の記録がまだ無いのもその一つです。無理をして全部を数字にしようとすると、根拠のない見込みが計算の土台に入ります。先に分けておけば、決められる側だけを確定させて、残りは開業後に回せます。

開業日から逆算した進み方

時期の目安は次のとおりです。準備の進み具合で前後してかまいませんが、順番は入れ替えないでください。

時期 やること 完了の目安
独立6ヶ月前の後半 サイトの形を決める(「専門サイト vs 事務所サイト」) 開業時に作るサイトの形が決まっている
独立6ヶ月前の終わり 費用の項目を決め、1年あたりに直す表の枠を作る(この記事) 空欄の表が1枚できている
独立3ヶ月前 制作会社と面談し、見積もりを受け取る(「制作会社の選び方」) 受け取ったその場で表に書き写せている
独立2ヶ月半前 1年あたりの合計を出し、開業資金の配分の中に置いて決める 発注する範囲が決まっている
開業日 公開。相談の入口と受任の記録を付け始める 記録の欄が使える状態になっている
開業後 記録がたまったら、残しておいた計算を足す 費用に届くまでに要る相談件数を自分で出せる

この記事が担うのは、上の表の2行目です。3行目で使う道具を、その前に用意しておく形になります。

開業前に決められることと、開業してからでないと決められないこと

ここが、この記事でいちばん効く節です。費用が見合うかどうかの判断は、2つの側でできています。片方は開業前に確定できますが、もう片方はできません。先に分けておきます。

2つの側と、いま決まるかどうか

中身 開業前に決まるか 理由
出ていく側 届いた見積もりを、1年あたりの費用という同じ単位にそろえる 決まる 使うのは見積書に書かれた額と、自分で決める年数と、自分が使う時間だけ。事務所の記録が要らない
入ってくる側 その費用に届くまでに、何件の相談が要るか 決まらない 受任1件あたりの売上と、相談から受任に至った割合が要る。どちらも自分の事務所の記録から出るもので、開業前には存在しない

この分け方は、ウェブ集客を支援する側から置いたものです。開業前の弁護士が実際にどこで止まるかを調べた数字があるわけではありません。使う材料が手元にあるかどうかで分けると、この線になります。

足りない数字を、外から借りて埋めない

入ってくる側を計算したくなったとき、埋め方はいくつも思いつきます。相場として出ている数字を当てる。開業してから来る相談の件数を多めに置いてみる。ほかの事務所の数字を借りる。いずれもとらないことをおすすめします。埋めた数字に根拠がないためです。計算そのものは動きますし、表も埋まります。ところが動いたのは前提の置き方だけで、根拠は何も増えていません。埋まった表を見て決めると、決めた根拠が自分の置いた見込みになります。

ほかの事務所の数字についても同じです。受任1件あたりの売上も、相談から受任に至った割合も、扱う分野と相談の入り口によって変わります。別の事務所の数字を当てはめても、自分の事務所の計算にはなりません。入ってくる側を開業後に回すのは、そこに置ける数字が本当に無いからで、後回しにして済ませているのではありません。

なぜ1年あたりという単位にそろえるのか

出ていく側でやることは、見積もりを1年あたりの費用に直すことです。金額の大小をそのまま比べない理由が2つあります。

含まれているものが同じではないからです。ページの数、原稿を誰が書くか、写真を撮影するか、公開した後に自分で手を入れられるか。これらが違えば額が違うのは当然で、額の差は、その差の分だけ何が付いているのかを見ないと意味が読み取れません。どちらの会社が優れているかという話ではなく、比べる前の形がそろっていない、という話です。

支払いが初期費用で終わらないからです。保守やサーバーの費用は公開した後も続きます。ページを足すたびに費用がかかる契約もあります。さらに、原稿を自分で用意するのであれば、そこに自分の時間が乗ります。初期費用だけを見比べると、この続く分が抜け落ちます。

そこで、初期費用を自分で決めた年数で割り、続く費用と自分の時間を足します。これで、項目立ての違う見積もりが同じ単位で並びます。以下、この作業を4つの手順に分けます。

手順1 費用の項目をこちらで決めて、届いた見積もりを割り振り直す

ここでは、表の枠を作ります。見積もりが届いたら、書き写すだけの状態にしておきます。

項目を先に決める

見積書の項目名も、まとめ方も会社ごとに違います。そこで、こちらで項目を決めて、届いた見積もりをその項目に割り振り直します。会社が並べた順のままでは、そもそも並ばないためです。

費用の項目 1社目 2社目 書き写すときの注意
初期費用 一式の中に何が含まれるかを、別の欄に書き出す
初期費用を何年で見るか(自分で決める) すべての見積もりに同じ年数を当てる(手順2)
年ごとの保守・サーバー・ドメイン 月ごとの額で書かれていれば12倍して年に直す
ページを足すときの費用 合計には入れず、注記として残す
原稿を誰が用意するか 金額の欄ではなく作業の欄(手順3)
写真を誰が撮るか 撮影の手配まで含むかどうかで分かれる
自分が使う時間(月あたり) 時間のままでよい(手順3)
1年あたりの合計 ページを足すときの費用を除いて出す

ページを足すときの費用を合計に入れない理由

この欄だけは、合計から外して注記にします。開業前の時点では、何ページ足すことになるかが決まっていないためです。見当の付かないものを掛け算に入れると、合計そのものが見込みの数字になります。

ただし、欄は残してください。事務所サイトから始めて、扱う分野が固まったら足していく進め方をとる以上、この欄の扱いは公開した後に効いてきます。面談で確かめる項目として持って行くために、空欄のまま置いておきます。

載せる項目の一覧と突き合わせる

「開業予定地の事務所のサイトを調べる」で、開業日に公開する版に載せる項目の一覧を作りました。その一覧が、そのまま見積もりの範囲を確かめる手がかりになります。一覧にあるのに見積書のどの項目にも見当たらないものは、範囲の外に置かれているかもしれません。

これは、額の高い安いとは別の話です。範囲が狭ければ額は小さく出ます。狭い分をどこで埋めるのかが決まっていない状態が、後で費用を動かします。一覧と見積もりを突き合わせ、どちらにも入っていない項目に印を付けておきます。

見積もりが届く前に用意しておくもの

  • 費用の項目を決めた表(この節の表)。空欄のままでよい
  • 開業日に公開する版に載せる項目の一覧(「開業予定地の事務所のサイトを調べる」で作ったもの)
  • 初期費用を何年で見るかを書き込む欄(手順2で決める)
  • 自分が使う時間を書き込む欄(手順3で決める)
  • 見積書から読み取れなかった項目を書き留める欄

手順2 初期費用を何年で見るかを自分で決める

ここでは、表のいちばん効く1行が決まります。初期費用は開業のときに一度出ていきますが、そのサイトは公開した後も使い続けます。1年あたりに直すには、何年に割り振るかを決める必要があります。

年数の目安を、こちらからは示さない

先にお断りしておきます。この記事では、初期費用を何年で見るかの目安を示しません。サイトを使うつもりの期間も、契約の期間も、途中で作り直すかどうかも人によって違いますし、何年で見るのが妥当かを示せる根拠を持っていないためです。

年数の取り方で、1年あたりの費用は動きます。短く取れば大きく出て、長く取れば小さく出ます。ここを外から埋めると、その一手で合計が変わります。決めるのは自分です。手がかりだけを置きます。

決めるときの手がかり3つ

手がかり 見るところ 年数への効き方
契約に期間の定めがあるか 見積書と契約書に、最低の契約期間や解約の条件が書かれているか 定めがあるなら、その期間より短く見る理由は乏しくなる
このサイトをいつまで使うつもりか 事務所サイトから始めて、扱う分野が固まったら専門サイトを足す進め方の中で、このサイトが担う役割がいつまで続くか 事務所サイトは専門サイトを足した後も残るため、長めに見る根拠になりうる
途中で作り直す可能性 開業してから扱う分野の重みが変わったときに、載せる項目ごと作り直すことになりそうか 可能性が高いと見るなら、短めに取ることになる

2つ目の手がかりは、独立準備中だからこそ効きます。事務所サイトは、専門サイトを足した後も事務所の顔として残る役割を持ちます。この役割がいつまで続くと見るかが、そのまま年数の根拠になります。

すべての見積もりに同じ年数を当てる

決めた年数は、どの見積もりにも同じものを当ててください。片方だけ長く見ると、比べる意味がなくなります。年数を変えれば、金額の順位はいくらでも入れ替えられるためです。

決めた年数と、決めた理由は書き留めておきます。面談で契約の期間と解約の条件を確かめたときに、聞いた中身と置いた年数が食い違えば、置き直せばよいだけです。置き直すときも、すべての見積もりで同じように置き直します。

手順3 自分が使う時間を、費用と同じ表に乗せる

ここでは、見積書の金額欄には出てこないのに、実際には確実に出ていくものを表に乗せます。一人で始める以上、この欄は空にできません。

開業直後に自分に乗ってくる作業

見積もりの中には、金額ではなく「どちらがやるか」で書かれている項目があります。原稿を誰が用意するか、写真を誰が撮るか、公開した後に記事を足すのは誰か。自分でやる項目は、金額としては表に出ませんが、時間としては出ていきます。

開業直後は、集客の担当者はいません。フォームを見るのも、電話を受けるのも、原稿を書くのも自分です。事件の対応と重なる時期に月どれだけの時間を出せるかが、そのまま実行できるかどうかの制約になります。

作業 誰がやるか(見積もりから) 自分がやる場合の月あたりの時間
固定ページの原稿を書く
分野ごとのページの原稿を書く
写真の手配
公開した後に記事を足す
問い合わせへの返信

時間を費用に置き換えるかどうかは自分で決める

この時間を費用として合計に足したい場合は、自分の1時間をどう置くかを決めて、月あたりの時間に掛けます。いくらと置くのが妥当かは、この記事では扱いません。

決められなければ、時間のまま欄に残しておいてかまいません。月にどれだけの時間が要るのかが分かっていれば、判断には使えます。見積もりの額が小さいほうが、自分が使う時間は多くなっている、という並びが見えるだけでも、比べ方は変わります。

次の段の切り分けと対になる

この欄は、次の記事で作る一覧と対になります。「制作会社の選び方」では、外に頼む範囲と自分で持つ範囲を切り分けた一覧を面談に持って行きます。切り分けの一覧が作業の側から見た表で、この節の表が時間の側から見た同じものです。

自分が使う時間の欄で確かめること

  • 見積もりのうち、金額ではなく「どちらがやるか」で書かれている項目を拾い出したか
  • 自分がやることになる作業を、月あたりの時間で書き出したか
  • 開業直後の事件の対応と重なったときに、その時間を出せるかを考えたか
  • 時間を費用に置き換えるか、時間のまま置くかを決めたか
  • 見積もりごとに、自分が使う時間がどう変わるかを並べたか

手順4 1年あたりの合計を出し、開業資金の配分の中に置く

ここで、出ていく側が確定します。手順1から手順3までで埋めた欄を足し合わせると、見積もりごとに1年あたりの費用が1つの数字になります。

合計の出し方

初期費用を手順2で決めた年数で割り、年ごとの保守・サーバー・ドメインを足します。時間を費用に置き換えると決めたなら、その分も足します。ページを足すときの費用は、注記のまま残します。

計算 1社目 2社目
⑴ 初期費用
⑵ 初期費用を見る年数(両方の列で同じ)
⑶ 1年あたりに直した初期費用(⑴÷⑵)
⑷ 年ごとの保守・サーバー・ドメイン
⑸ 自分が使う時間を費用に置いた分(置かないなら空欄)
⑹ 1年あたりの合計(⑶+⑷+⑸)
注記 ページを足すときの費用
注記 自分が使う時間(月あたり)

⑹が出た時点で、項目立ての違う見積もりが同じ単位で並びます。そして、額の差が何の差だったのかも見えてきます。ページの数なのか、原稿の作成が入っているかなのか、写真の撮影が含まれているのか。どの提案書にも集客に強いと書かれていますが、その言葉が指す作業の範囲は会社によって違います。含まれる作業が違えば額も違う、というだけのことです。

1年あたりに直した額と、実際に出ていく時期は別

ここは分けて持ってください。⑶は比べるための単位であって、その額がその年に出ていくという意味ではありません。初期費用は開業の前後にまとまって出ていきます。

開業直後は手元の資金が動く時期です。比べるための表とは別に、いつ、どの支払いが来るのかを並べた欄を持っておくと、資金の側の判断と混ざりません。

配分の中に置く

1年あたりの合計が出たら、開業準備で出ていくほかのものと並べます。サイトの費用だけを見ても、高い安いは決まらないためです。同じ1年あたりの単位に直せば、ほかの配分先とも並びます。

いくらまでかけてよいかの上限は、この記事では示しません。開業資金の総額も、ほかの配分先の重さも人によって違いますし、上限を示せる根拠を持っていないためです。代わりにできるのは、配分の中での位置を見ることです。1年あたりの合計がほかの配分先と比べてどのあたりに来るのかを、自分で見て決めます。

大きすぎると感じたときに動かすもの

並べてみて、サイトの配分が大きすぎると感じることがあります。そのときに、開業してから来る相談を多めに置いて自分を納得させる、という埋め方はとらないでください。置いた数字に根拠がないことは、置く前と変わりません。

動かせるのは費用の側です。手は3つあります。

  • 作る範囲を絞る。 開業日に公開する版に載せる項目を減らし、残りは公開した後に足します。載せる項目の一覧を作ってあるので、どれを後に回すかはその一覧の上で決められます
  • 自分で持つ範囲を増やす。 原稿を自分で書く形にすれば金額の側は下がりますが、手順3の時間の欄は増えます。下がったのではなく、移ったということです
  • 時期をずらす。 いま作る部分と後に回す部分を分けます。1年あたりの合計が下がります

いずれの手でも、範囲を変えた見積もりをもう一度もらって、同じ表で出し直すのがいちばん早い進め方です。頭の中で引き算をすると、何が減ったのかが後から分からなくなります。

いま出せない計算 — 費用に届くまでに何件の相談が要るか

ここでは、開業前には出せない計算を、なぜ出せないのかとあわせて置いておきます。置いておくのは、後で足せるようにするためです。

本来はこう出す

1年あたりの費用が出たら、次に来る問いは「その費用に届くまでに、何件の相談が要るか」です。この計算には次の2つが要ります。

  • 受任1件あたりの売上 — その年に受任した事件から入った額を、受任した件数で割った額
  • 相談から受任に至った割合 — 受任した件数を、新規の相談の件数で割ったもの

この2つを掛けると、相談1件あたりに見込める売上が出ます。1年あたりの費用をその額で割れば、費用に届くまでに要る相談の件数が出ます。これが、相談1件あたりの採算という見方です。

なぜ開業前には出せないのか

上の2つは、どちらも自分の事務所の記録から出るものです。相談を受けた記録、受任した記録、会計の帳簿。開業前の時点で、この3つは存在しません。

借りてきた数字で埋めない理由は、前の節に書いたとおりです。そのうえで、この計算に使う数字は、開業して記録を付け始めれば手に入ります。いま無理に埋める理由がありません。開業前に出せないものを出さないでおくのは、ウェブ集客を支援する側からの判断です。

出せないことが、いまの判断を止めるわけではない

入ってくる側が出せなくても、出ていく側は確定します。見積もりを同じ単位で並べ、配分の中に置いて決めるところまでは進みます。止まるのは、費用に見合うかどうかを件数で言い切るところだけです。

もう一つ、この計算で出るのは「何件の相談が要るか」であって、「サイトを作ると相談が何件来るか」ではありません。作ったサイトにどれだけ相談が来るかを示す数字は、開業後の自分の記録以外にはありません。この違いは、記録がそろってからも変わりません。

開業日から数え始める3つ — 残した計算を後で成立させるために

ここでは、開業前に用意しておく記録の欄を決めます。用意するのは記録そのものではなく、欄と、いつ書くかの決めごとです。開業日から数え始めれば、たまったところで残しておいた計算を足せます。

数え始める3つ

数えるもの 記録する中身 これが埋まると出せるもの
経路別の新規の相談の件数 相談を受けたときに、何を見て来られたかを一言うかがって残す。紹介/法律相談センターや法テラス/検索/ポータル/その他 サイト経由の相談だけを取り出せる
受任した件数 その相談が受任に至ったかどうか。既存の依頼者からの追加の依頼には印を付けて分けておく 相談から受任に至った割合
受任1件あたりの売上 受任した事件から入った額。着手金と報酬金のどちらの時点で数えるかを、開業のときに決めて以後そろえる 相談1件あたりに見込める売上

3つ目の「どちらの時点で数えるか」は、開業のときに決めてしまってください。途中で扱いを変えると、前後が比べられなくなります。どちらを選ぶかより、そろっていることのほうが効きます。

既存の依頼者からの追加の依頼を分ける理由

新規の相談の件数を数えるとき、すでに依頼を受けている方からの追加の依頼は分けてください。追加の依頼は、サイトを見て来た方からのものではありません。混ぜると、割合も単価も実態からずれます。

同じ理由で、紹介で来られた方が来所の前にサイトを見ていた場合も、経路は紹介のままにします。迷う相談は無理に振り分けず、判断の付かないものとして別に残しておきます。

始め方は軽くする

開業したばかりの時期は手が足りません。最初は、日付と経路の区別の2列だけでもかまいません。表計算のファイルで足ります。手を広げすぎると続きませんし、続かない記録はたまらないので使えません。欄を用意しておくことと、開業日から始めることのほうが、欄の数より効きます。

そろったときに、この記事の表の下に足すもの

記録がたまったら、手順4で出した1年あたりの費用の下に、前の節の計算を足せます。そのときに気をつけることが2つあります。1つは、出す数字を一点にしないことです。受任1件あたりの売上は分野によって違いますし、割合も動きます。低い側と高い側の2通りで出して、幅で持ってください。もう1つは、数えるのがサイト経由の相談だけだということです。紹介で来ている相談を混ぜると、サイトの費用に見合うかどうかとは関係のない数字になります。

開業前に用意しておく記録の欄

  • 相談を受けた日付を書く欄
  • 何を見て来られたかの経路を書く欄(紹介/法律相談センターや法テラス/検索/ポータル/その他)
  • 既存の依頼者からの追加の依頼に印を付ける欄
  • 受任に至ったかどうかを書く欄
  • 受任した事件から入った額を書く欄と、いつの時点で数えるかの決めごと
  • 誰が、いつ書くか(受けたときか、面談の後か)の決めごと

よくある失敗と注意点

費用の見方を決める段でつまずきやすいところを、5つ挙げます。

  • 失敗1: 相場を調べて、その額を自分の物差しにする — 出てくる額は、別の事務所が別の範囲で発注したときのものです。範囲がそろっていない額を並べても高いか安いかは決まりません。比べる先は、同じ単位に直した自分の見積もり同士になります
  • 失敗2: 初期費用だけを見比べる — 続く費用と自分が使う時間が抜け落ちます。初期費用が小さいほうが、自分の時間は多く乗っている、ということが起こります
  • 失敗3: 見積もりごとに違う年数を当てる — 年数を変えれば順位はいくらでも入れ替わります。決めた年数は、すべての見積もりに同じものを当てます
  • 失敗4: 入ってくる側を見込みで埋めて、表を成立させる — 埋めれば計算は動きますが、動いたのは前提の置き方だけです。決めた根拠が自分の置いた見込みになります
  • 失敗5: 記録の欄を用意しないまま公開する — 開業後に残しておいた計算を足そうとしたときに、たまっているものがありません。欄は開業前に作れます

もう一つ、注意点があります。この記事の表が出すのは、見積もりを並べるための単位であって、いくらまでかけてよいかの答えではありません。出るのは、性質の違う費用が同じ単位に並んだ1枚と、そこに乗っている自分の時間です。どこまで出すかは、開業資金の配分と、開業後に自分でどこまで手を動かすつもりかによって変わります。

まとめ — 次のステップ

この記事の要点

  • 費用が見合うかどうかは出ていく側と入ってくる側でできている。開業前に確定できるのは出ていく側だけ
  • 入ってくる側が出せないのは、受任1件あたりの売上と、相談から受任に至った割合が自分の事務所の記録から出るもので、開業前には存在しないため。相場やほかの事務所の数字で埋めない
  • 出ていく側は、初期費用を自分で決めた年数で割り、続く費用と自分の時間を足すと、項目立ての違う見積もりが同じ単位で並ぶ
  • 手順1は費用の項目をこちらで決めて割り振り直す。ページを足すときの費用は注記に残す
  • 手順2は初期費用を何年で見るかを自分で決める。手がかりは契約の期間・このサイトをいつまで使うか・作り直す可能性の3つ。全部の見積もりに同じ年数を当てる
  • 手順3は自分が使う時間を同じ表に乗せる。金額の欄に出てこないのに確実に出ていくもので、一人で始める以上この欄は空にできない
  • 手順4は1年あたりの合計を出し、開業資金の配分の中に置く。1年あたりに直した額と、実際に出ていく時期は分けて持つ
  • 大きすぎると感じたら、動かすのは費用の側。作る範囲を絞る・自分で持つ範囲を増やす・時期をずらし、範囲を変えた見積もりで出し直す
  • 開業日から経路別の新規の相談の件数・受任した件数・受任1件あたりの売上を数え始めれば、残しておいた計算を後で足せる
  • 4つの手順を通してもいくらまでかけてよいかの上限は出てこない。出るのは、同じ単位に並んだ1枚と、そこに乗っている自分の時間

次のステップ

費用の見方が決まったら、次は誰に何をどこまで頼むかを決める段です。「制作会社の選び方」では、面談の前に外に頼む範囲と自分で持つ範囲を切り分ける手順と、面談で自分から確かめる4つの項目を扱います。

この記事で作った表は、そのまま面談に持って行けます。見積もりを受け取ったその場で、決めておいた項目の欄に書き写せる状態になっているためです。手順3の時間の欄は、次の記事で作る切り分けの一覧と対になります。手順2で決めた年数は、面談で契約の期間と解約の条件を確かめたときに、置き直すかどうかの材料になります。表は、発注する範囲を決める段まで持ち越して使いますので、手元に残しておいてください。

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