独立準備中の弁護士がホームページのあいさつ文を事実で書く4つの手順

この記事のポイント

制作会社から届く原稿の枠には、たいてい文例が入っています。「依頼者に寄り添い、誠実に対応します」。そのまま埋めれば原稿は完成しますが、同じ文が同じ地域の弁護士のサイトにも並びます。書き出しで止まるのは表現力の問題ではなく、置き換える先の事実を決めていないためです。置き換える先は、相談の受け方・連絡の付き方・担当の決まり方という、これから自分が決める運用です。独立1〜2ヶ月前のこの段階で、原稿を渡す前に決めることと確かめることが決まります。

制作会社から原稿の枠が届いた。トップページの冒頭に入れる文、弁護士の紹介の「強み」の欄、分野ごとのページの書き出し。欄には薄い字で文例が入っている。「依頼者に寄り添い、誠実に対応します」。そのまま使えば埋まる。ところが同じ地域の弁護士のサイトにも、ほとんど同じ言葉が並んでいた。書き直そうとしたが、まだ自分の事務所で相談を受けたことがないので、書ける中身が思い当たらない。原稿の欄が埋まらないと、公開の日が動きます。

ここで止まるのは、書く力の問題ではありません。「寄り添います」「誠実に」が他の弁護士の文と同じになるのは、その言葉が誰にでも言えるものだからです。置き換える先は自分の事務所でしか書けない事実で、その多くは開業前に決められます。相談の受け方も連絡の付き方も、これから決めるものです。決めていないから書けないだけで、決めれば書けます。

この記事では、まず同じ文が並ぶ理由と置き換える先を示し、そのあとを4つの手順に分けます。扱うのはトップページ・弁護士の紹介・分野ごとのページの「あいさつ文」と「強み」の欄で、記事の書き方は前の「コンテンツ戦略・記事の書き方」のとおりです。読み終えると、独立1〜2ヶ月前の時点で、原稿を渡す前に決めておくことと、渡す前に確かめることが決まっている状態になります。制作費の相場、デザインの良し悪し、書き換えたあとに相談が何件増えるかは扱いません。いずれも示せる根拠を持っていないためです。

なぜ原稿を渡す前に、決まり文句の避け方を決めておくのか

ここでは、この作業を独立準備のどの時点に置くかが決まります。「サイト構成・固定ページ設計」と「カテゴリー設計」で載せるページと欄が決まりました。残っているのは、その欄に入る文です。理由は3つあります。

理由1: 文例のまま埋めた原稿は、公開したあとに手を入れる仕事になる

薄い字の文例は、消さなくても原稿として成立します。だからこそ残りやすい欄です。公開したあとで手を入れる場合、文章の差し替えは制作会社の作業になり、頼む手間と待つ時間がかかります。開業直後は、その手間をいちばん出しにくい時期です。

理由2: 原稿は、外に頼めない唯一の部分になりやすい

設計も構築も公開の作業も外に頼めます。あいさつ文と強みの欄だけは、事務所の運用を決めた本人でないと中身が出てきません。ここが遅れると、ほかの工程が終わっていても公開できません。

理由3: 開業前に決めた運用が、そのまま開業直後の運用になる

決めるのは、文章だけではありません。初回の相談にどれだけ時間をとるか、電話が通じる時間帯をどうするか、留守番電話とメールにいつ返すか。文に書くために決めることが、そのまま開業初日からの動き方になります。

開業日から逆算した進み方

時期の目安は次のとおりです。準備の進み具合で前後してかまいませんが、順番は入れ替えないでください。

時期 やること 完了の目安
独立2ヶ月前 載せるページと欄を決める(「サイト構成・固定ページ設計」「カテゴリー設計」) 欄の一覧ができている
独立1〜2ヶ月前の前半 文例で埋まる欄と自分で書く欄を分け、置き換える先を決める(手順1〜手順3) あいさつ文と強みの欄の原稿ができている
独立1〜2ヶ月前の後半 原稿を渡す前に確かめる(手順4) 確認の項目をひととおり当て、判断が付かない表現の行き先が決まっている
独立1ヶ月前 記事からの導線を整える(「お問い合わせ導線の設計」) 読んだ人が次にどこへ進むかが決まっている
開業日 公開。相談の入口と、書いた目安が守れているかを記録し始める 記録の欄が使える状態になっている
開業後 空けた欄を埋め、書いた目安と実際がずれていれば直す 扱ってきた相談の入口と続いている分野が書ける

この記事が担うのは、上の表の2行目と3行目です。制作会社に頼まず自分で作る場合も、道具に付いてくる見本の文が文例の代わりになるだけです。

同じ文が並ぶのは表現力の問題ではない — 置き換える先は自分の事務所でしか書けない事実

ここが、この記事でいちばん効く節です。「依頼者に寄り添い、誠実に対応します」という文は、事務所の名前を別の弁護士のものに入れ替えても、そのまま成り立ちます。姿勢を述べた文で、姿勢はどの弁護士も同じように述べられるためです。同じ言葉が地域のいくつものサイトに並ぶのは、その言葉が誰にでも言えるからです。

そう考えると、言い回しをひねっても結果は変わりません。「心に寄り添う」に書き直しても、別の弁護士の事務所の名前を入れて成り立つことは変わらないためです。

置き換える先の4つの範囲

置き換える先は、自分の事務所でしか書けない事実です。おおむね次の4つの範囲に集まります。この分け方は、ウェブ集客を支援する側から置いたものです。どの範囲が読まれやすいかを数えた調査はありません。

範囲 中身 開業前に書けるか
相談の受け方 初回の相談で何を持ってきてもらうか、どのくらいの時間をとるか、その場で何を伝えるか 書ける(自分で決めるもの)
連絡の付き方 電話が通じる時間帯、留守番電話やメールに返すまでの目安、返すのが誰か 書ける(自分で決めるもの)
担当の決まり方 相談を受けた弁護士がそのまま担当するのか、分野で分けるのか、複数で見るのか 書ける(自分で決めるもの)
扱ってきた相談の入口 紹介・検索・ほかの士業からの案内のうちどの入口が多いか、どの分野の相談が続いているか 書けない(自分の事務所の記録から出るもの)

この4つは、別の弁護士の事務所の名前を入れると成り立たなくなります。事務所ごとに運用が違うためです。読み手の側から見ても意味が変わります。姿勢を読んでも、次にすることは変わりません。初回の相談の持ち物と所要時間が書いてあれば、手元のものをそろえてから電話をかけられます。

4つ目だけが、開業前には埋まりません。ここは空欄のまま公開して、開業後に足します。理由と埋め方は後ろの節で扱います。

差を作る場所は、見出しやキャッチコピーではなく本文

見出しは短いので、姿勢を述べる言葉しか入りません。事実は本文に置くことになります。これもウェブ集客を支援する側から見た配置の考え方です。デザインの案を見比べる段でも、決まるのは器で、中身は原稿の側にあります。

4つの手順

手順 やること 終わりの目印
手順1 届いた原稿の枠を、文例で埋まる欄と自分で書く欄に分ける 欄ごとに、自分で書く欄かどうかの印が付いている
手順2 欄ごとに置き換える先を決めてから書き始める 決まり文句ごとに、置き換える先の文ができている
手順3 決まっていない欄は、書き方で埋めずに開業前に決める 書くために決めるべき運用が決まっているか、空欄のまま残す判断が付いている
手順4 原稿を渡す前に確かめる 確認の項目をひととおり当て、判断が付かない表現の行き先が決まっている

次の節は手順1です。置き換える方向が決まっても、どの欄から手を付けるかが決まらなければ、限られた時間で全部の欄を書くことになります。

手順1 届いた原稿の枠を、文例で埋まる欄と自分で書く欄に分ける

ここでは、手を付ける欄と順番が決まります。制作会社から届くのは、たいてい欄の一覧と、その欄に入る文例です。まとめて良い悪いと決めず、欄ごとに分けます。

分けるときに当てる5つ

欄に入っている文例、あるいは自分で書いてみた下書きに、次の5つを順に当てます。

  1. 事務所の名前を、別の弁護士のものに入れ替えても成り立つか。 成り立つなら、誰にでも言える文です。ここが一番早く分かる基準になります
  2. 読んだ人が、次にすることが変わるか。 読む前と後で行動が変わらない文は、判断の材料になっていません
  3. これから自分が実際にそう動くと決められることか。 決めれば書けるものと、自分の側では動かせないものがここで分かれます
  4. 開業後に、記録や面談の進め方と突き合わせられる事実か。 突き合わせられない文は、あとで守れているかどうかも分かりません
  5. 相談の中身や、依頼者が特定される事情が入っていないか。 ここは書く案の段階で見ておく項目です

3つ目が、開業前ならではの基準です。すでに事務所を持っている場合は「実際にやっていることを書き写したか」で分かれますが、開業前は書き写す先がありません。代わりに、これから決められるかどうかで分かれます。決められるものは手順3で決めます。

欄ごとの表

欄の一覧を左に置いて、印を付けていきます。文の良し悪しではなく、文例のままでも通ってしまう欄かどうかで分けると、手を付ける順が決まります。

文例のまま埋まるか 自分で書く欄か 先に手を付けるか
トップページの冒頭のあいさつ文
弁護士の紹介のあいさつ文
弁護士の紹介の「強み」の欄
分野ごとのページの書き出し
相談の流れ
費用
お問い合わせ

先に手を付けるのは、2列目に印が付いた欄です。文例のままでも通ってしまう欄は、置き換えた分だけそのまま増えます。原稿の欄を上から順に全部書こうとすると、独立準備で取れる時間では終わらず、途中で止まります。

分けていくと、相談の流れと費用の欄には決めた中身がそのまま入るのに対して、冒頭のあいさつ文と弁護士の紹介に文例が残りやすくなります。これは支援の場で見てきた範囲での見立てで、自分の原稿では別の並びになることもあります。

手順1で手元にそろえておくもの

  • 制作会社から届いた原稿の枠(欄の一覧と文例)。自分で作る場合は道具に付いている見本の文
  • 「サイト構成・固定ページ設計」「カテゴリー設計」で決めた、載せるページと欄の一覧
  • 欄ごとの印を付ける表(この節の表)
  • 先に手を付ける欄の順番を書き留める欄
  • 判断が付かない表現に印を付けておく欄(手順4で使う)

手順2 欄ごとに置き換える先を決めてから書き始める

ここでは、書き出しの止まり方が変わります。文例を消してから何を書くか考えるのではなく、置き換える先の事実を決めてから入れ替えます。消してから考えると、空いた場所に別の決まり文句が入るためです。

よく入っている5つと、置き換える先

文例に入っていることが多い文 置き換える先の事実 書く前に決めておくこと
依頼者に寄り添います 初回の相談で何を持ってきてもらうか、どのくらい時間をとるか、その場で何を伝えるか 分野によって進め方を変えるなら、その違いも書けるか
誠実に対応します 電話が通じる時間帯、留守番電話やメールに返すまでの目安、返すのが誰か 事件の対応と重なる時期にも同じ目安で返せるか。返せない場合があるなら、その条件も書けるか
親身になって話を聞きます 相談の進め方(聞き取りの順、同席してよい方の範囲、当日の持ち物) 毎回そのとおりに進められるか。例外があるなら書き分けられるか
迅速に対応します 問い合わせから面談までにかかる日数の目安、当日に連絡が取れる場合の条件 裁判所に出ている日や出張の日をはさんだときにも、その目安で動けるか
経験豊富な弁護士が対応します 担当の決まり方と、相談を受けてから受任までに誰が何をするか 相談の中身や、依頼者が特定される事情が入っていないか

5つ目は、開業前にはいちばん書きにくい行です。扱ってきた相談の入口や続いている分野は、自分の事務所の記録がないと書けません。ここは担当の決まり方までにとどめ、残りは空欄のまま置きます。

書くときの線引き2つ

1つ目は、自分の側の運用として言えることにとどめることです。「〜します」と書けるのは、事務所として実際にそう動くと決めたことまでです。相談したあとに何がどうなるかは相手方や裁判所の関わることなので、切り分けて書きます。結果を約束する書き方にはしません。

2つ目は、目安は一点で書かず、幅と条件を添えることです。返答の速さや面談までの日数は時期によって動きます。動く前提で、幅と、動く条件をそのまま書きます。開業直後は事件の入り方が読めないので、この線引きはとくに効きます。

書き換えの形

次は書き方の形を示すための例です。時間や日数は、自分の事務所の運用に置き換えてください。ここに置いた数字に根拠があるわけではありません。

  • 文例のまま — 「依頼者に寄り添い、誠実に対応します。」
  • 置き換えたあと — 「初回のご相談は60分お取りしています。届いている書面と、これまでのやり取りの記録をお持ちください。その場で、次に何をするか、いつまでにするかをお伝えします。お電話は平日9時から18時までつながります。時間外の留守番電話とメールには、原則として翌営業日中に折り返します。裁判所に出ている日は、翌々日になることがあります。」

長さは2倍ほどになりますが、増えたのは事実の数です。一文に2つの事実を詰め込まず短い文を並べると、読み手が自分に関係する行だけを拾えます。

分野ごとのページの書き出しも同じ形

「相続に力を入れています」で始めると、また誰にでも言える文になります。その分野の相談で初回に何を持ってきてもらうと話が早いか、面談の進め方がほかの分野とどう違うかを書くと、分野ごとに文が変わります。

ここは「カテゴリー設計」で決めた分野の並びと、「コンテンツ戦略・記事の書き方」で選んだ記事のテーマの両方に接します。記事のほうの書き方は前の記事のとおりで、この節で扱うのは書き出しの数行だけです。

手順3 決まっていない欄は、書き方で埋めずに開業前に決める

ここが、開業前にいちばん時間のかかる節です。手順2の表を埋めていくと、置き換える先の事実そのものが決まっていない欄が出てきます。返答までの目安を決めていない、面談の進め方を決めていない、といった状態です。開業前は、そのほとんどが決まっていません。

その欄は、書き方を工夫して埋めるのではなく、事務所の運用として先に決めます。決まっていないことは書けませんし、書けば開業してから守れない目安が残ります。

原稿を書くために決めておく運用

決めること 決めるときの手がかり 決めないまま書くとどうなるか
初回の相談にとる時間 聞き取りと、次にすることを伝えるところまで一度で終えられる長さ 書いた時間と実際がずれる
初回に持ってきてもらうもの 話を進めるために手元にあるとよい書面 当日に足りないものが出て、もう一度来てもらうことになる
電話が通じる時間帯 裁判所に出る日や外出の入り方を見て決める 書いた時間帯に取れない日が続く
留守番電話とメールに返すまでの目安 いちばん立て込む時期でも守れる幅と、守れない条件 返信が目安を超え、何も書いていない状態と同じになる
問い合わせから面談までの日数の目安 急ぎの相談を差し込む余地の持ち方 先の日程しか出せず、書いた目安が使えない
担当の決まり方 開業直後は自分が受けて自分が担当する。人が増えたときの分け方 「担当が対応します」のような、誰のことか分からない文が残る

ひとりで始める前提で決める

開業直後は、相談の受付をする人も、集客を見る人もいません。電話を取るのも、フォームの通知を見るのも、面談をするのも自分です。この前提で決めないと、書いた目安が最初の1ヶ月で守れなくなります。

目安は、余裕のある時期に合わせるのではなく、いちばん立て込む時期でも守れるところに置いてください。「制作会社の選び方」で切り分けた、自分で持つ範囲の作業も同じ時間の中に入ります。

決まらない欄は、空けたまま渡す

その場で決まらない欄もあります。決まるまでは、その欄を空けたまま先に進んでください。あとで入れることを制作会社に伝えておけば、公開の工程は止まりません。

手順3で決めたことを書き留める欄

  • 初回の相談にとる時間と、その中で何を伝えるか
  • 分野ごとに、初回に持ってきてもらうもの
  • 電話が通じる時間帯と、取れない日の条件
  • 留守番電話とメールに返すまでの目安の幅と、幅を超える条件
  • 問い合わせから面談までの日数の目安
  • 担当の決まり方と、人が増えたときの分け方
  • その場で決まらず、空けたまま渡す欄の一覧

手順4 原稿を渡す前に確かめること — 氏名と所属弁護士会の表示

ここでは、原稿を渡す前と公開の前に当てる項目が決まります。文章をまとめて入れ替えるときに落ちやすいのが、決まった記載です。弁護士等の業務広告に関する規程は、次のように定めています。

弁護士は、広告中に次に掲げる事項を表示しなければならない。一氏名(職務上の氏名を使用している者については、職務上の氏名をいう。以下同じ)。二所属弁護士会

表示しなければならないものとして、氏名と所属弁護士会の2つが挙げられています。この文言が言っているのは、表示すべき事項がこの2つだということまでです。どこまでが広告として扱われるのかの定義は、ここには含まれていません。原稿の側では、この2つがどの欄に入るかを先に決めておきます。

この表示の趣旨

東京弁護士会の非弁提携弁護士対策本部は、この表示の趣旨を次のように説明しています。

業務広告の責任の所在を明確することと、問題広告についての所属弁護士会への通報を容易にして被害の未然防止を図るという趣旨

デザインの都合で外せる飾りではない、ということです。あいさつ文の下やページの末尾にこの記載を置くつもりなら、原稿の欄としてはじめから確保しておきます。

実務上の点として挙げられている2つ

同じ解説は、実務上の点として次の2つを挙げています。

1登録番号の表示までは求められていません。2弁護士法人でない法律事務所の広告の場合は、責任者1名の氏名の表示が必要です。

求められているのは登録番号までではなく、また弁護士法人でない法律事務所の広告については責任者1名の氏名とされています。表示する範囲がそこまでで済む、という説明です。原稿を書く側から見ると、この表示のために調べ直すことがあるとすれば表記をそろえる程度で、書き出しの手を止める理由にはなりません。

そのうえで、自分のサイトのどのページ・どの記載までがこの表示の対象になるのかは、ページの作りによって変わります。ここは自分で決めずに、所属弁護士会に確認してから公開してください。この記事では、個々の表現がどう扱われるかの判定はしません。

原稿を渡す前と公開の前に当てる6項目

次の6つを、欄ごとに上から順に当てます。

公開の前に当てる6項目

  • 氏名が表示されているか
  • 所属弁護士会が表示されているか
  • 書いた文が、開業後に記録や面談の進め方と突き合わせられる事実になっているか
  • 結果を約束する書き方が残っていないか
  • 相談の中身や、依頼者が特定される事情が入っていないか
  • 判断が付かない表現に印を付け、確認する先を決めたか

最後の項目の扱いを決めておくと、原稿が止まりません。判断が付かない表現は、印を付けたまま載せないことにします。その欄を空けたまま公開すれば、公開日は動きません。印の付いた表現は1つずつ聞かず、ある程度たまってからまとめて所属弁護士会に確認するほうが手間が減ります。

制作会社に渡すときの扱い

原稿を渡したあと、文章を欄に流し込むのは先方の作業です。記載が落ちるとすれば、この工程です。上の6項目のうち少なくとも上2つは先方の側でも見てもらう形にしておくと、公開したあとに頼み直す手間がなくなります。

この6項目は、一度作れば次から使えます。分野ごとのページを足すとき、記事を書くとき、先方から文案が上がったときも同じ順で当てられます。

開業前には埋まらない欄 — 扱ってきた相談の入口と、続いている分野

ここでは、開業前には書けない欄を、なぜ書けないのかとあわせて置いておきます。後で埋められるようにするためです。

なぜ書けないのか

置き換える先の4つの範囲のうち、4つ目だけが性質が違います。相談の受け方も連絡の付き方も担当の決まり方も、自分で決めれば書けます。ところが「どの入口からの相談が多いか」「どの分野の相談が続いているか」は、決めて書くものではありません。自分の事務所で相談を受けた記録から出るもので、開業前には存在しません。

借りてきた中身で埋めない

この欄を埋めたくなったとき、埋め方はいくつか思いつきます。一般に言われていることを書く。ほかの弁護士のサイトの書き方をなぞる。いずれもとらないことをおすすめします。欄は埋まりますが、別の弁護士の名前を入れても成り立つ文に戻るだけです。

前の事務所で担当してきた経験を、自分の事務所の欄にどう書けるかを迷う場合もあります。ここは、この記事では判定しません。判断が付かない表現として印を付け、所属弁護士会に確認する先に回してください。確認が済むまでは、その欄を空けたまま公開できます。

空欄でも、ほかの3つが埋まっていれば読み手の材料になる

4つ目が空いていても、残りの3つが事実で埋まっていれば、読み手は「ここに連絡してよいか」を決める材料を持てます。初回の相談の持ち物と所要時間、電話が通じる時間帯、返信までの目安。これだけで、読んだあとにすることが決まります。開業直後のサイトが弱く見えるとすれば、実績の欄が空いているからではなく、残りの3つも書いていないからだ、という見方になります。

開業日から記録を付けて、空けておいた欄を埋める

ここでは、開業前に用意しておく記録の欄を決めます。用意するのは記録ではなく、欄と、いつ書くかの決めごとです。

記録する4つ

記録するもの 書く中身 たまると何が書けるか
相談の入口 何を見て来られたかを一言うかがって残す。紹介/法律相談センターや法テラス/検索/ポータル/ほかの士業からの案内 扱ってきた相談の入口の欄
相談の分野 どの分野の相談だったか。「カテゴリー設計」で決めた区分をそのまま使う 続いている分野の欄と、分野ごとのページの書き出し
初回の面談で実際に使った時間 予定の長さではなく、実際にかかった時間 書いた所要時間を直すかどうかの材料
返信までにかかった日数 留守番電話やメールを受けてから返すまで。目安を超えた回は条件も残す 書いた目安の幅を直すかどうかの材料

下の2つは、この記事で書いた文と直結します。書いた目安と実際がずれていたら、運用を変えるか、書いた文の幅を直すかのどちらかです。ずれたまま置くと、書いてあることと違う状態が続きます。

始め方は軽くする

開業したばかりの時期は手が足りません。最初は、日付・入口・分野の3列だけでもかまいません。手を広げすぎると続きませんし、続かない記録はたまらないので使えません。欄を用意しておくことと、開業日から始めることのほうが、欄の数より効きます。

埋めるときに気をつけること

記録がたまったら、空けておいた欄を埋めます。気をつけることが2つあります。1つは、相談の中身や、依頼者が特定される事情を入れないことです。書けるのは入口と分野の並びまでです。もう1つは、判断が付かない書き方になったら、載せずに印を付けることです。手順4で作った6項目を、そのまま当てられます。

よくある失敗と注意点

原稿の欄を埋める段でつまずきやすいところを、5つ挙げます。

  • 失敗1: 文例をそのまま残して公開する — 文例は消さなくても原稿として成立します。手順1で印を付けておかないと、そのまま公開まで進みます
  • 失敗2: 言い回しをひねって済ませる — 「心に寄り添う」に書き直しても、別の弁護士の名前を入れて成り立つことは変わりません。変えるのは言い回しではなく、書いてある中身です
  • 失敗3: 決めていない目安を書く — 返信の目安も面談までの日数も、決める前に書くと開業してから守れません。決めるまでは空けたまま渡します
  • 失敗4: 見出しやデザインで差を付けようとする — 見出しは短く、姿勢を述べる言葉しか入りません。差が付くのは本文に並んだ事実のほうだ、という見方になります
  • 失敗5: 判断が付かない表現を自分で決めて載せる — 迷った表現は印を付け、所属弁護士会に確認してから載せます

もう一つ、注意点があります。この記事の手順が出すのは、あいさつ文と強みの欄に入る文であって、公開したあとに相談が何件来るかではありません。出るのは、別の弁護士の名前を入れると成り立たなくなる文と、それを書くために決めた事務所の運用です。

まとめ — 次のステップ

この記事の要点

  • 「寄り添います」「誠実に」が他の弁護士の文と同じになるのは、その言葉が誰にでも言えるものだから。言い回しをひねっても変わらない
  • 置き換える先は相談の受け方・連絡の付き方・担当の決まり方・扱ってきた相談の入口の4つ。前の3つは開業前に決められる
  • 手順1は届いた原稿の枠を、文例で埋まる欄と自分で書く欄に分ける。基準は5つで、3つ目が「これから決められるか」
  • 手順2は置き換える先を決めてから書き始める。消してから考えると、空いた場所に別の決まり文句が入る
  • 手順3は決まっていない欄を、書き方で埋めずに開業前に決める。いちばん立て込む時期でも守れる目安に置く
  • 手順4は原稿を渡す前に確かめる。規程は表示すべき事項として氏名と所属弁護士会を挙げている。どの記載までが対象になるかは所属弁護士会に確認する
  • 扱ってきた相談の入口と続いている分野は自分の事務所の記録から出るもので、開業前には書けない。空欄のまま公開して開業後に足す
  • 開業日から入口・分野・面談で実際に使った時間・返信までの日数を記録すれば、空けた欄を埋められる
  • 4つの手順を通しても気の利いた言い回しは出てこない。出るのは、別の弁護士の名前を入れると成り立たなくなる文

次のステップ

あいさつ文と強みの欄が決まったら、次は読んだ人を問い合わせまで運ぶ段です。「お問い合わせ導線の設計」では、記事や分野ごとのページから問い合わせへ進んでもらう置き方を扱います。

この記事で決めた中身は、そのまま次の段で使えます。初回の相談の持ち物と所要時間、電話が通じる時間帯、返信までの目安は、問い合わせの直前で読み手が確かめたい中身と重なります。手順4で作った6項目も、導線まわりの文言に当てられます。手順3で決めた運用は開業初日からの動き方そのものになりますので、書き留めたものは手元に残しておいてください。

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