独立準備中の弁護士がホームページ制作の提案書で要る項目と欠けている項目を見分ける方法

開業前に提案書を読む意味 — 用語が分からなくても項目は分けられる

独立準備中に制作会社へ問い合わせると、提案書が届きます。「内部SEO対策」「MEO対策」「レスポンシブ対応」といった用語が並んでいますが、初めてホームページを作る段階では、それが自分の事務所にとって何を意味するのか分かりません。質問しても長い説明が返ってくるだけで、結局何が含まれていて何が含まれていないのかが掴めないまま、契約の判断を迫られます。

用語の意味を一つずつ調べる必要はありません。提案書の項目は、「自分の事務所のサイトで具体的に何をするのか」に置き換えられるかどうかで読めます。置き換えられない項目は、中身がないか、制作会社の側でも詰まっていない可能性があります。

この記事では、提案書によく並ぶ項目を3つの領域に分けたうえで、開業前・開業直後の事務所が確かめるべき点と、提案書に書かれていないが確かめるべき項目を整理します。

提案書の項目は3つの領域に分かれる — 中身・集客の仕組み・公開後の運用

制作会社の提案書に並ぶ項目は、大きく3つの領域に分かれます。

領域 含まれる項目の例 確かめること
サイトの中身 ページ構成、デザイン、コンテンツ作成、写真撮影、プロフィールページ 何ページ・どの内容を誰が用意するか
集客の仕組み SEO対策、MEO対策、広告運用、アクセス解析 具体的に何をするか・成果をどう測るか
公開後の運用 保守管理、更新作業、サーバー費用、ドメイン管理 何を・いつまで・いくらで対応するか

提案書を受け取ったら、最初にやることは各項目をこの3つのどこに入るかに分けることです。分けると、ある領域にまったく項目がない、あるいはある領域の項目が名前だけで中身がない、ということが見えてきます。

開業前の段階では、制作会社とのやり取りが初めてであることがほとんどです。提案書の構成は会社ごとに異なりますが、3つの領域に項目がない場合は、含まれていないのか、別途費用なのか、そもそも対応していないのかを確認する必要があります。確認しないまま契約すると、開業後に「それは含まれていません」と言われる項目が出てきます。

サイトの中身に関わる項目 — 開業時は実績がない前提でページ構成を確かめる

サイトの中身に関わる項目は、提案書の中では最も分量が多い部分です。開業前・開業直後の事務所では、ここで確かめるべきことが既存の事務所とは異なります。

ページ構成について確かめること

提案書に「トップページ、事務所概要、弁護士紹介、取扱分野、アクセス、お問い合わせ」のようにページ名が列挙されている場合、それだけでは判断できません。開業前の事務所では、次の点を確かめます。

確認項目 開業前・開業直後の事務所で確かめる理由
取扱分野ページは分野ごとに分かれるか、1ページにまとまるか 開業時に受ける分野が1〜2分野に絞られている場合でも、分野ごとにページがあるかどうかで検索から見つけてもらえる範囲が変わります
解決事例のページは含まれるか 開業直後は掲載できる事例がない場合があります。事例が増えたときに追加できる仕組みが最初から入っているかを確かめます
料金ページは含まれるか 相談前に費用を確かめたい人は多く、この情報がないと問い合わせに至らないことがあります。料金体系が固まっていない段階でも、「初回相談の費用」「着手金の考え方」を載せることはできます
コラム・記事の仕組みは含まれるか 開業後に記事を増やすことで検索からの流入を育てていく場合、記事を投稿できる仕組みが最初から入っているかどうかで、あとから追加する費用が変わります

コンテンツ作成について確かめること

「コンテンツ作成」と書いてある場合、これが「原稿を制作会社が書く」のか「弁護士が書いた原稿を制作会社が整える」のかで、作業量がまったく違います。開業準備と並行して原稿を書く時間が取れるかどうかは、発注の段階で見積もっておく必要があります。

確認項目 開業前に確かめる理由
原稿は誰が書くか 独立準備中は登録手続き・事務所探し・備品の準備と並行して動いています。原稿を自分で書く場合、必要な本数と文字数の目安を先に把握しないと、開業日に間に合わなくなることがあります
写真は誰が用意するか 事務所がまだ決まっていない、あるいは内装が整っていない段階では、撮影のタイミングを制作会社と合わせる必要があります
修正は何回までか 開業前は判断基準が定まりきっていないため、修正が増えがちです。修正回数の上限と超過時の費用を確認しておきます

「コンテンツ作成5ページ分」のように書いてあっても、1ページあたりの文字数や構成の目安がなければ、成果物の質は分かりません。過去に作ったページの例を見せてもらうと、制作会社が想定している1ページの中身が分かります。

集客の仕組みに関わる項目 — 開業直後は「何をするか」だけ確かめる

集客の仕組みに関わる項目は、提案書の中で最も分かりにくい部分です。「SEO対策」「MEO対策」「アクセス解析」といった用語が並んでいるだけでは、制作会社が何をするのかが分かりません。

SEO対策について確かめること

提案書に「SEO対策」「内部SEO」「SEO設計」と書いてある場合、これが指す作業の範囲は制作会社によってまったく異なります。

確認項目 具体的に聞くこと
対策の範囲 サイトの構造を整えることだけか、検索で上位に出るための記事作成まで含むか
対象の検索語 どのような検索語で見つけてもらうことを想定しているか。開業する地域と取扱分野を踏まえた提案があるか
作業の内容 ページのタイトルや説明文の設定だけか、表示速度の改善やリンク構造の整理まで含むか
成果の測り方 何をもって対策が効いたと判断するか。定期的な報告があるか

「SEO対策込み」と一言で書いてある場合、多くはサイトの構造を整える作業を指しています。検索で上位に出るための継続的な記事作成は、別途費用であることがほとんどです。開業直後は予算が限られるため、この区別を把握しておかないと、後から想定外の費用が発生します。

MEO対策について確かめること

「MEO対策」は、Googleマップでの表示を整える作業を指します。開業する地域で相談者が地域名で検索してマップ経由で事務所を見つけることがあるため、提案に含まれていることがあります。

確認項目 具体的に聞くこと
何をするか Googleビジネスプロフィールの登録・整備を代行するのか、登録後の投稿や口コミ対応まで含むか
誰がやるか 初期登録だけ制作会社がやって、その後は自分で管理するのか
費用の形 初期費用だけか、月額費用が発生するか

Googleビジネスプロフィールの登録と基本情報の入力は、手順さえ分かれば自分でもできる作業です。開業直後で予算を抑えたい場合、登録は自分で行い、サイトの制作だけを外注するという選択肢もあります。

アクセス解析について確かめること

「アクセス解析ツール設置」と書いてある場合、ほとんどはGoogleアナリティクスなどの解析ツールをサイトに設置する作業を指しています。設置するだけなのか、定期的にデータを見て改善提案をしてくれるのかで、意味がまったく違います。

開業直後はアクセス数そのものが少ないため、定期報告を付けても見るべき数字がほとんどない時期が続きます。まずは解析ツールの設置とアカウントの紐づけだけを確認し、報告が必要になったタイミングで追加するという進め方もあります。

公開後の運用に関わる項目 — 開業後に制作会社を変えられるかが最も大きい

公開後の運用に関わる項目は、提案書の中では目立たない位置に書かれていることが多いですが、開業後に最も影響の大きい領域です。

保守管理について確かめること

確認項目 開業前・開業直後に確かめる理由
サーバー費用は含まれるか サーバーの契約が制作会社名義の場合、制作会社との契約を終了するとサイトが使えなくなることがあります。開業時から自分名義で契約しておくと、後から制作会社を変えたくなったときに影響を受けません
ドメインの名義は誰か ドメインが制作会社名義の場合、契約終了後にアドレスを使い続けられないことがあります。開業時に自分名義で取得しておくのが原則です
セキュリティ更新は含まれるか サイトの基盤となるソフトウェアの更新を定期的に行わないと、セキュリティ上の問題が発生する可能性があります
テキスト修正は含まれるか 開業直後は料金改定や取扱分野の追加など、変更が頻繁に発生します。修正が月額費用に含まれるか、1回ごとに費用がかかるかで、ランニングコストが変わります
契約期間の縛りはあるか 開業後に方針が変わることは珍しくありません。最低契約期間がある場合、期間内に制作会社を変更したくなっても解約できないか、違約金が発生します

提案書に書かれにくいが確かめるべき項目

項目 確認すること
サイトのデータの所有権 契約を終了した場合、サイトのデータ(デザイン・原稿・写真)を受け取れるか
サイトの移行 制作会社を変更する場合、サイトを別の環境に移す作業を依頼できるか。費用はかかるか
連絡窓口 担当者が変わった場合の引き継ぎはあるか。修正依頼から反映までの目安日数は決まっているか

これらの項目が提案書に明記されていない場合は、契約前に書面で確認を取ることをおすすめします。口頭の説明だけでは、担当者が変わったときに齟齬が生じやすくなります。開業前の段階で書面に残しておくと、開業後に問題が起きたときの拠りどころになります。

提案書の外で確かめること — 実績と制作後の体制

提案書の項目だけを見ていても判断できないことがあります。開業前の事務所が提案書の外で確かめるべきことは、主に2つです。

制作実績について

制作会社が法律事務所のサイトを作った経験があるかどうかは、提案書の項目の精度に直結します。経験がある場合、取扱分野のページ構成、弁護士プロフィールの見せ方、相談予約の導線など、法律事務所に特有の要素を理解したうえで提案してくれる可能性が高くなります。

確かめ方としては、次のことを聞きます。

  • 法律事務所のサイトを何件くらい制作したことがあるか
  • 制作した事務所のサイトを見せてもらえるか
  • 弁護士の広告に関する規程を知っているか
  • 開業したばかりの事務所のサイトを作った経験はあるか

法律事務所の制作実績がないからといって、その制作会社が適さないとは限りません。ただし、開業前の事務所は実績も事例もない状態からサイトを組み立てる必要があるため、弁護士側から事情を伝える場面が増えることは見込んでおく必要があります。

制作後の体制について

提案書はサイトの公開までの作業を記載するものですが、サイトは公開してからが本番です。開業後に記事を追加したい、新しい取扱分野を増やしたい、と思ったときに、制作会社に頼めるのか、自分でできるのか、別の会社に頼む必要があるのかを確かめておくことが重要です。

確認項目 開業前に確かめる理由
自分でページを追加・編集できる仕組みか 開業直後は予算が限られます。軽微な修正のたびに制作会社に依頼する手間と費用を抑えるには、管理画面から自分で編集できる仕組みが必要です
制作会社以外でも修正できるか サイトの仕組みが制作会社独自のものだと、将来別の会社に修正を依頼できないことがあります
公開後のサポート期間 操作方法を聞ける期間が決まっているか。開業直後は不慣れな操作で質問が増えやすいため、サポートの範囲と期間を確認しておきます

まとめ

提案書の項目を見分けるポイントは2つです。

1つ目は、書いてある項目に中身があるか。「SEO対策」「MEO対策」「コンテンツ作成」のように名前だけが書いてある項目は、「自分の事務所のサイトで具体的に何をするのか」を確かめます。開業前の段階では制作会社との付き合いが初めてであるため、遠慮せずに聞くことが大事です。

2つ目は、書いてあるべき項目が欠けていないか。サイトの中身・集客の仕組み・公開後の運用の3つの領域に分けたとき、いずれかの領域にまったく項目がなければ、含まれていないのか、別途費用なのかを確認します。特に、ドメインとサーバーの名義、データの所有権、契約期間と解約条件は、開業前に確かめておかないと後から取り返しがつきにくい項目です。

複数の制作会社から提案を受けている場合は、同じ確認項目で各社の回答を並べると、提案の範囲と費用の違いが見えやすくなります。回答が書面で返ってこない項目があれば、契約前にメールなどの記録に残る形で確認を取ることをおすすめします。

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