独立準備中の弁護士がホームページを自作する時間を金額に直して外注と比べる方法

開業前の判断 — ホームページを自分で作るか外注するかを数字で比べる

自分で作れば制作費はかからない。WordPressなら無料のテーマがある。土日に少しずつ進めればよい。独立準備中にそう考える方は少なくありません。けれど、実際に手を動かし始めると何時間かかるか分からない。開業準備には登録手続き、事務所探し、備品の手配、挨拶回りと、他にも時間を使う作業が並んでいます。自分で作る時間を確保できるのか。外注すれば費用がかかるが、自分の時間は空く。どちらが得かを比べたいのに、自作の側に値段が付いていないので並べられない。

自作の時間を金額に直せば、外注と同じ単位で比べられます。この記事では、自作にかかる時間の洗い出し方、時間を金額に換算する方法、外注の費用と並べたときの差の読み方を、順に示します。

自作の費用は「ゼロ」ではない

ホームページを自分で作ると、制作会社に払う費用は発生しません。しかし、制作に使った時間は本来、開業準備や法律業務に充てられた時間です。その時間に自分の時間単価を掛けた金額が、自作の実質的な費用になります。

たとえば、制作に合計80時間かかり、自分の時間単価が1万円であれば、自作の実質費用は80万円です。制作費を払っていなくても、80万円分の稼働を制作に振り向けたことになります。

この「時間×単価」で出る金額と、外注した場合の費用を並べると、初めて同じ単位で比較できます。手順は4つあります。

手順1 自作にかかる時間を洗い出す

自作にかかる時間は「だいたい土日で何回か」ではなく、作業ごとに分けて書き出します。

作業 内容の例 自分の見積もり(時間)
構成の検討 どのページを作るか、各ページに何を載せるかを決める
原稿の執筆 プロフィール、取扱分野の説明、料金の説明などを書く
デザイン・レイアウト テーマの選定、色・フォントの調整、画像の選定と配置
技術的な構築 ドメイン取得、サーバー契約、WordPressの設置、テーマの設定、プラグインの導入
フォームの設置 問い合わせフォームの作成、送信先の設定、自動返信の設定
スマートフォン対応 各ページがスマートフォンで崩れないかの確認と修正
公開前の確認 リンク切れ、誤字脱字、表示崩れの点検
公開後の修正 公開してから見つかった不具合の対応

右の列に自分の見積もりを入れてください。

見積もりのコツは、経験のない作業ほど長めに取ることです。WordPressを触ったことがなければ、技術的な構築だけで相当な時間がかかります。開業前は他のタスクと並行するため、まとまった時間が取れず作業が分断されやすく、効率も下がります。

また、テーマの候補を探す時間、参考にするサイトを眺める時間、途中で方針を変えてやり直す時間は、表には載りにくいですが実際には相当な割合を占めます。表の合計に2〜3割を足しておくほうが実態に近くなります。

手順2 自分の時間単価を出す

時間単価の出し方はいくつかありますが、開業前の段階に合った方法を選びます。

勤務時代の年収がある場合は、年収を年間の稼働時間で割る方法が使えます。

項目 自分の数字
勤務時代の年収(税抜)、または開業後の目標年収
年間の稼働時間(時間)
時間単価(年収 ÷ 稼働時間)

タイムチャージで仕事をしていた場合は、その単価をそのまま使うこともできます。ただし、開業直後は稼働率が読めないため、タイムチャージ単価より実際の時間単価は低くなることがあります。

ここで完璧な数字を出す必要はありません。桁が合っていれば比較には使えます。

手順1で出した合計時間に、ここで出した時間単価を掛けてください。それが「自作の実質費用」です。

項目 自分の数字
自作にかかる時間(手順1の合計) 時間
自分の時間単価(上の表) 円/時間
自作の実質費用(時間 × 単価)

手順3 外注の費用と並べる

自作の実質費用が出たら、外注した場合の費用と同じ表に並べます。

項目 自作 外注
制作会社への支払い 0円 (見積もりを取る)
自分の時間の費用 (手順2の金額) (打ち合わせ・原稿準備の時間 × 時間単価)
合計

外注した場合も、自分の時間はゼロにはなりません。制作会社との打ち合わせ、原稿の準備、確認と修正の指示には時間がかかります。ただし、デザインや技術的な構築を自分でやる必要がないため、自作に比べれば短くなります。

外注の費用は、この記事では具体的な相場を書きません。比較に使う数字は、実際に見積もりを取って手に入れてください。

見積もりを取るときに確認しておくと比較の精度が上がる項目があります。

確認する項目 理由
原稿の用意はどちらがやるか 「お客様にてご用意」なら、原稿執筆の時間は自分の側に加算する
写真撮影は含まれるか 別途なら、撮影の手配と費用を自分の側に加算する
ドメイン・サーバーの費用は含まれるか 別途なら、年間の維持費を合計に加算する
公開後の修正・更新は含まれるか 含まれなければ、修正のたびに追加費用がかかるか、自分でやることになる
保守契約の月額と期間 初期費用が安くても、月額を年間で積むと合計が変わる

手順4 差額だけでは決まらない — 開業前の事情を重ねて読む

手順3で合計を並べると、差額が出ます。ただし、この差額の大小だけで判断すると見落とす要素があります。開業前・開業直後ならではの事情を3つ挙げます。

1つ目は、開業準備の他のタスクとの兼ね合いです。

独立準備中は、登録手続き、事務所探し、備品の手配、挨拶回りなど、やるべきことが集中しています。サイト制作に時間を取られると、他の準備が遅れます。開業日が決まっている場合、サイト制作に何十時間も費やす余裕があるかどうかは現実的に見積もる必要があります。

2つ目は、完成するまでの期間です。

自作は、開業準備の合間に進めるため、着手から公開までの期間が長くなりがちです。開業日までにサイトを公開したいのであれば、外注して制作期間を圧縮する方が現実的な場合があります。

3つ目は、公開後の更新です。

ホームページは公開して終わりではありません。開業後も取扱分野の追加、料金の変更、記事の掲載など手を入れ続ける必要があります。自作した場合、更新も自分でやることになります。開業直後は案件の対応に追われるため、サイトの更新まで手が回らなくなることがあります。

この3つを差額と合わせて考えると、次のような整理ができます。

状況 自作が向く場合 外注が向く場合
開業準備の忙しさ 開業まで時間に余裕がある 開業日が迫っていて他のタスクも多い
公開の急ぎ度 開業後しばらくはサイトがなくても支障がない 開業日にサイトを公開したい
公開後の更新 自分で手を入れたい・入れられる 更新を任せたい
差額 自作の実質費用のほうが明らかに安い 差が小さい、または外注のほうが安い
予算 開業資金を制作費に回す余裕がない 制作費に充てる予算を確保できる

4つの行がすべて同じ列に寄れば判断しやすいですが、実際にはばらつきます。ばらつく場合は、自分にとって最も重い行がどれかを決めて、その行の方向に寄せるのが一つの方法です。

見積もりの精度を上げるために確認すること

見積もりを出したあと、次の3点を確かめておくと、あとから「思っていたのと違った」となりにくくなります。

自作の時間を甘く見積もっていないか。ホームページ制作が初めてであれば、想定より大幅に時間がかかることは珍しくありません。とくにテーマの選定とデザインの調整は、選択肢が多く時間を取られやすい作業です。

外注の見積もりに含まれていないものはないか。手順3の確認項目の表をもう一度見てください。「原稿はお客様にてご用意ください」と書いてあれば、原稿の執筆時間は自分の側に加算する必要があります。

比較の期間を揃えているか。自作の費用は制作時だけですが、外注の場合は月額の保守費用が発生することがあります。1年間、3年間といった同じ期間で比べると、初期費用だけの比較とは違う結果になる場合があります。

まとめ

ホームページを自作すれば制作費はかかりません。しかし、制作に使う時間を金額に直すと、実質費用はゼロではありません。

作業を分解して合計時間を出し、自分の時間単価を掛ける。その金額と、外注の見積もりを同じ表に並べる。差額に加えて、開業準備の忙しさ、公開までの期間、公開後の更新の負担を重ねて読む。この手順で、「自分で作るか外注するか」を、感覚ではなく数字の入った比較で判断できます。

開業準備中は時間の使い方が最も大きな判断基準になります。まずは手順1の表を埋めて、自作にかかる時間の合計を出すところから始めてください。

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