開業直後でも得意分野を伝える4つの書き方

開業時にホームページを作るとき、「離婚問題を専門に扱っています」と書こうとして手が止まった経験はないでしょうか。弁護士の広告規制では「専門」という表現の使用が制限されています。しかし、力を入れたい分野があるのにそれを伝えられなければ、相談者に選んでもらうことは難しいです。

この記事では、「専門」を使わずに得意分野を伝える4つの書き方を、経験の厚さに応じて整理します。規程の根拠、各表現の使いどころ、具体的な書き方の例を順に見ていきます。

「専門」が広告規制で推奨されない理由

日本弁護士連合会の「弁護士等の業務広告に関する規程」第3条は、広告に記載できない事項を定めています。同条第3号では、「事実に合致していない広告」を禁じています。

問題になるのは、「専門」という語の定義が曖昧なことです。医師の場合は学会認定の専門医制度があるため、「専門」の裏付けが明確になります。しかし弁護士の場合、日弁連や各単位会が公式に「専門分野」を認定する制度は存在しません。そのため、ホームページに「専門」と記載した場合、その表現が事実に合致しているかどうかを客観的に証明する手段がありません

日弁連の広告に関するガイドラインでも、「専門家」「専門」等の表記については慎重な対応が求められています。懲戒請求に至るケースは多くはありませんが、同業からの指摘や単位会からの注意を受ける可能性がある以上、リスクを取って使う理由はありません。

重要なのは、「専門」を使えないことが不利になるわけではないということです。以下の4つの書き方で、得意分野は十分に伝わります。

書き方1 「得意分野」 — 実績が厚い分野に使う

「得意分野」は、「専門」の代替表現として最も広く使われています。この表現が適切なのは、実際にその分野の案件を相当数扱っており、実績が蓄積されている場合です。

たとえば、勤務時代から通算して離婚事件を数百件扱ってきた弁護士であれば、「得意分野:離婚・男女問題」と記載しても、事実との乖離はありません。

書き方の例としては次のような形になります。

  • 「当事務所の得意分野は相続・遺言です」
  • 「離婚問題を得意分野として取り組んでいます」

注意点がひとつあります。開業直後で独立してから扱った件数がまだ少ない場合、「得意分野」と名乗ることに無理が出ることがあります。その場合は次の書き方2か書き方3のほうが実態に合います。

書き方2 「取扱い分野」「取扱い業務」 — 扱っている分野に使う

「取扱い分野」「取扱い業務」は、その分野の案件を受け付けているという事実だけを伝える表現です。得意かどうかの評価を含まないため、広告規制上のリスクが最も低いです。

複数の分野を幅広く扱う場合、すべての分野を「得意分野」とするのは不自然になります。このような場合、メインの分野を「得意分野」、それ以外を「取扱い分野」として書き分けると、相談者にとって分かりやすい構成になります。

書き方の例としては次のような形です。

  • 「取扱い分野:相続、離婚、交通事故、債務整理、刑事事件」
  • 「取扱い業務一覧」としてページを分け、分野ごとに対応内容を記載する

この表現は事実の記載なので、実際に受け付けている分野であれば問題になりません。ただし、扱った経験がない分野まで「取扱い」に含めると、事実と合致しない広告になりうる点は意識しておく必要があります。

書き方3 「積極的に取り組んでいる分野」 — 経験は浅いが受けたい分野に使う

独立したばかり、あるいは新しい分野に力を入れ始めたばかりで、まだ実績が十分にない場合があります。このときに「得意分野」と書くのは実態に合いません。かといって「取扱い分野」だけでは、力を入れていることが伝わりません。

「積極的に取り組んでいる分野」という表現は、現在の姿勢を示すものであり、実績の多寡を問いません。事実として力を入れて取り組んでいるのであれば、誇張にはなりません。開業直後の弁護士にとって、最も使いやすい表現です。

書き方の例は次のとおりです。

  • 「現在、交通事故事件に積極的に取り組んでいます」
  • 「労働問題について、積極的に取り組んでいる分野です」

この表現を使う場合、研修の受講やその分野に関する記事の公開など、取り組みの実態が外から確認できる状態にしておくと、相談者にとっての説得力が上がります。言葉だけでは、読む側には判断材料がないからです。

書き方4 実績の数字で示す — 件数・年数・対応割合

4つ目は、言葉の選び方ではなく、数字で示す方法です。「得意分野」と名乗るよりも、数字のほうが読み手にとって判断材料になる場合があります。

使える数字には次のようなものがあります。

数字の種類 書き方の例
対応件数 「相続案件の対応実績:累計200件以上」
経験年数 「離婚事件に15年間携わっています」
対応割合 「当事務所の受任案件のうち、約6割が交通事故事件です」

数字を使うときの条件は、事実であることです。広告規程上、事実に合致していない数字の記載は禁止されています。概算で書く場合は「約」「以上」をつけ、正確性を担保します。

なお、数字と書き方1〜3は併用できます。「得意分野:相続(累計200件以上の対応実績)」のように書けば、表現と根拠がセットになり、相談者にとって最も分かりやすい形になります。勤務時代の経験年数や対応件数も含められるため、独立直後でも十分に活用できます。

まとめ — 経験の実態に合わせて4段階で書き分ける

「専門」を使わなくても、得意分野を伝える方法は4つあります。

経験の段階 適切な表現
実績が十分にある 「得意分野」
扱っている分野として伝えたい 「取扱い分野」「取扱い業務」
経験は浅いが力を入れている 「積極的に取り組んでいる分野」
数字で裏付けられる 件数・年数・対応割合で記載

大事なのは、表現を選ぶ基準は「何と書きたいか」ではなく「何が事実か」だということです。事実に合った表現を使えば広告規制上の問題は生じませんし、相談者にとっても信頼できる情報になります。独立直後は「積極的に取り組んでいる分野」から始めて、経験が積み重なれば自然に「得意分野」へと移行していきます。

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