弁護士の広告規制が2026年に改正された内容と事務所で確認すべきこと

2026年7月に弁護士の広告規制が改正されました。改正があったこと自体は知っているが、具体的に何が変わったのか、自分の事務所で何か対応が必要なのかが分からないという方も多いのではないでしょうか。独立・開業にあたって広告やウェブサイトの整備を進める段階であれば、改正後の規程を踏まえた運用体制を最初から組んでおくのが効率的です。

この記事では、2026年7月1日施行の「弁護士等の業務広告に関する規程」の改正内容を、実務に影響がある部分に絞って整理します。そのうえで、自分の事務所で対応が必要かどうかを確認するためのチェックリストを示します。

2026年7月施行の改正で変わった主な内容

今回の改正の中心は、広告に関連する書類の保存義務の拡大です。従来の規程でも広告の記録保存は求められていましたが、今回の改正で対象範囲が広がり、保存すべき書類の種類が具体的に明示されました。

改正の主なポイントは以下の3つに整理できます。

改正ポイント 改正前 改正後(2026年7月〜)
保存義務の対象書類 広告の内容を記録した書面 広告の内容に加え、広告に関する契約書類・入出金記録も対象
保存対象となる広告の範囲 主に紙媒体・看板等の従来型広告が念頭 ウェブ広告(リスティング広告・SNS広告等)も含むことが明示
保存期間 広告を行った日から3年間 広告を行った日から3年間(変更なし)

改正の背景には、弁護士のウェブ広告が増加する中で、広告に関する苦情が寄せられた際に事実関係を確認できる記録が残っていないケースが増えていたことがあります。特にリスティング広告やSNS広告は、配信内容が頻繁に変わるため、どの時点でどのような広告を出していたかを後から確認できない状態が問題視されていました。

なお、広告の表現に関する規制(誇大広告の禁止、比較広告の禁止など)については、今回の改正では実質的な変更はありません。広告規程第3条の禁止事項は従来と同じです。

保存義務の対象が広がった — 契約書類と入出金記録

今回の改正で最も実務に影響があるのは、保存義務の対象書類の拡大です。改正後に保存が義務付けられる書類を具体的に整理します。

保存が必要な書類の一覧

書類の種類 具体例 改正前の扱い
広告の内容を記録した書面 広告原稿のコピー、ウェブ広告のスクリーンショット、配信設定の記録 保存義務あり(従来と同じ)
広告に関する契約書類 広告代理店との契約書、業務委託契約書、発注書・受注書 保存義務の明示なし(今回追加)
広告に関する入出金記録 広告費の請求書、領収書、振込記録、クレジットカード明細 保存義務の明示なし(今回追加)

ウェブ広告における「広告の内容を記録した書面」とは何か

紙媒体や看板であれば、現物や写真を保存すればよいです。しかしウェブ広告の場合、広告の内容は管理画面で頻繁に変更されるため、何を保存すればよいのかが分かりにくいです。

改正後の規程の趣旨を踏まえると、以下の情報を保存しておくことが求められます。

  • リスティング広告の場合: 広告文のテキスト(見出し・説明文)、表示URL、配信キーワードの一覧、配信期間
  • SNS広告の場合: 広告クリエイティブ(画像・動画・テキスト)のスクリーンショット、ターゲティング設定、配信期間
  • ポータルサイトの広告掲載の場合: 掲載内容のスクリーンショット、掲載プラン、掲載期間

保存の形式について規程上の指定はありませんが、後から確認できる状態であることが必要です。PDFやスクリーンショットとして保存し、日付が分かるようにファイル名や保存先を整理しておくのが現実的な対応です。

保存期間は3年間

保存期間は改正前と変わらず、広告を行った日から3年間です。ウェブ広告の場合、「広告を行った日」は配信期間の最終日と解するのが自然です。たとえば2026年8月1日から9月30日まで配信したリスティング広告であれば、2029年9月30日まで保存が必要になります。

なお、税務上の帳簿書類の保存義務(原則7年間)のほうが長いため、入出金記録については実務上は税務の保存期間に合わせて保存すれば、広告規程の保存義務も自動的に満たされます。

自分の事務所で対応が必要かを確認するチェックリスト

以下のチェックリストで、自分の事務所で対応が必要かどうかを確認します。1つでも該当する項目があれば、保存体制の整備が必要です。

チェック1: ウェブ広告を出しているか

確認項目 対応の要否
Google広告(リスティング広告)を出している 広告文・配信設定・入出金記録の保存が必要
Yahoo!広告を出している 同上
SNS広告(Facebook・Instagram・X等)を出している 広告クリエイティブ・配信設定・入出金記録の保存が必要
ポータルサイトに広告を掲載している 掲載内容のスクリーンショット・契約書・入出金記録の保存が必要
いずれも出していない この項目は対応不要

チェック2: 広告代理店に運用を委託しているか

確認項目 対応の要否
広告代理店に運用を委託している 委託契約書の保存が必要。代理店が作成した広告内容の記録も事務所側で保存する
制作会社がホームページと一緒に広告も管理している 同上。業務委託の範囲に広告運用が含まれるか契約書を確認する
自分で広告を管理している 契約書類の保存は不要ですが、広告内容と入出金記録の保存は必要です

チェック3: 現在の保存体制はどうなっているか

  • 広告の原稿やスクリーンショットを保存しているか
  • 広告代理店との契約書を保管しているか
  • 広告費の請求書・領収書を整理して保管しているか
  • ウェブ広告の管理画面から過去の配信履歴を確認できるか

上記のうち、保存していない項目がある場合は、今後の保存体制を整える必要があります。過去の分について遡って保存することは難しい場合もありますが、少なくとも改正施行日(2026年7月1日)以降の広告については、保存を開始する必要があります。

最低限やるべきことの整理

対応が必要な事務所が、まず取り組むべきことを整理します。

対応項目 具体的な作業 頻度
広告内容の記録 広告の管理画面から配信中の広告文・クリエイティブのスクリーンショットを撮って保存する 広告内容を変更するたびに実施
契約書の保管 広告代理店との契約書・発注書をPDFまたは紙で保管する 契約締結時・更新時
入出金記録の保管 広告費の請求書・領収書・振込記録を月ごとに整理して保管する 毎月
保存場所の決定 紙の場合はファイル、電子データの場合はフォルダを決めて一元管理する 一度決めれば以降は運用するだけ

広告代理店に運用を委託している場合は、代理店に対して「配信した広告の内容を月次で報告してほしい」と依頼するのが効率的です。レポートに広告文のスクリーンショットを含めてもらえれば、保存作業の手間は大幅に減ります。

まとめ

2026年7月施行の広告規程改正の主な変更点は、広告に関する契約書類と入出金記録の保存義務が明示的に追加されたことです。広告の表現に関する規制(第3条の禁止事項)は従来と変わっていません。

対応が必要な事務所は、以下の条件に該当する場合です。

  • ウェブ広告(リスティング広告・SNS広告・ポータルサイト掲載)を出している
  • 広告代理店に運用を委託している
  • これまで広告内容のスクリーンショットや契約書を保存していなかった

対応の内容自体は複雑ではありません。広告内容のスクリーンショット保存、契約書の保管、入出金記録の整理を、月次の業務に組み込めばよいです。広告代理店に委託している場合は、月次レポートに広告内容の記録を含めてもらうのが効率的です。

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