記事を書いたほうがよいと分かっている。しかし「何について書くか」が決まらない。離婚の解説、相続の手続き、交通事故の流れ——テーマは漠然と思いつくものの、何から手を付ければよいか分からないまま時間が過ぎている。独立したばかりで相談件数がまだ少ない場合、題材の引き出し自体が限られていると感じることもあります。
この記事では、記事の題材を「相談者が実際に検索する悩み」から選ぶ方法を2つ紹介し、さらに法律解説・手続き案内・事例紹介という3タイプの記事の使い分けを説明します。「何を書くか」が決まれば、あとは書くだけです。
記事の題材は法律の体系ではなく相談者の悩みから選ぶ
弁護士が記事を書くとき、最もよくある失敗は法律の体系に沿ってテーマを選ぶことです。
たとえば、「民法第770条に基づく離婚の要件」「相続における遺留分減殺請求の概要」のようなテーマです。これらは法律的には正確ですが、相談者がこのような言葉で検索することはほとんどありません。
相談者が検索するのは、次のような言葉です。
| 法律の体系に沿ったテーマ | 相談者が実際に検索する悩み |
|---|---|
| 離婚の法定離婚事由 | 離婚したいが相手が応じない |
| 遺留分減殺請求の概要 | 遺言で自分の取り分がゼロだった |
| 交通事故の過失割合 | 交通事故 保険会社の提示額が低い |
| 債務整理の種類 | 借金が返せない どうすればいい |
| 不当解雇の要件 | 突然クビにされた 弁護士 |
左の列は弁護士が思いつくテーマ、右の列は相談者が検索窓に入力する言葉です。検索される言葉で記事を書かなければ、検索結果に表示されることはありません。
記事の題材選びの原則は1つです。「相談者が検索窓に入力する言葉」をそのまま記事のテーマにする。法律の体系は忘れて、相談者の頭の中にある悩みを起点にします。
では、相談者がどんな言葉で検索しているかを、どうやって知ればよいのか。方法は2つあります。
題材の見つけ方1 事務所に実際に来る相談から拾う
最も確実な方法は、自分の事務所に実際に来る相談をそのまま記事にすることです。
初回面談で相談者が話す内容は、まさに「検索しそうな悩み」の宝庫です。相談者は法律用語を知りません。「不貞行為」ではなく「浮気」と言い、「財産分与」ではなく「離婚 お金」と言い、「債務整理」ではなく「借金 どうしよう」と言います。その言葉が、そのまま検索キーワードになります。
開業直後でまだ相談件数が少ない場合でも、勤務弁護士時代に受けた相談を振り返ることで題材は見つかります。
題材を拾うための3つの方法
方法1: 初回面談の記録を見返す
過去3か月〜6か月の初回面談を振り返り、相談者がどんな質問をしたかを書き出します。特に複数の相談者から同じ質問を受けた内容は、検索需要が高い可能性があります。
- 「養育費は何歳まで払うのか」
- 「相続放棄の期限は過ぎてしまったが、もう手遅れか」
- 「示談金の相場はいくらか」
- 「自己破産すると仕事はどうなるのか」
これらの質問は、そのまま記事のタイトルに使えます。
方法2: 電話やメールでの問い合わせ内容を記録する
初回面談に至る前の段階で、電話やメールで受ける問い合わせにも題材があります。「まず何をすればよいか」「費用はいくらかかるか」「どのくらい時間がかかるか」といった質問は、相談者の関心が高いテーマです。
方法3: 受任後に依頼者から聞かれる質問を記録する
受任後の依頼者から「調停はどのくらいの頻度で開かれるのか」「裁判にはどのくらいかかるのか」といった質問を受けることがあります。これは手続きの流れに不安を感じている人が検索するテーマです。
題材を整理するための一覧表
拾った題材は、次のような一覧表にまとめておくと管理しやすくなります。
| 分野 | 相談者の質問・悩み | 想定される検索キーワード | 記事化の優先度 |
|---|---|---|---|
| 離婚 | 養育費は何歳まで払うのか | 養育費 何歳まで | 高(よく聞かれる) |
| 離婚 | 不倫の証拠はどうやって集めるのか | 不倫 証拠 集め方 | 高(よく聞かれる) |
| 相続 | 相続放棄の期限が過ぎた | 相続放棄 期限 過ぎた | 中 |
| 交通事故 | 保険会社の提示額が低すぎる | 交通事故 示談金 低い | 高(よく聞かれる) |
「よく聞かれる質問」は検索需要も高い傾向があります。優先度を付けて、よく聞かれるものから記事にしていくのが効率的です。
題材の見つけ方2 検索サジェストと関連キーワードから拾う
事務所への相談内容から拾えるテーマには限りがあります。開業して間もない場合や、相談件数が少ない場合は、検索サジェストと関連キーワードを使う方法が有効です。
検索サジェストとは
Googleの検索窓にキーワードを入力すると、入力の途中で候補が表示されます。これがサジェスト(提案)です。サジェストには、実際に多くの人が検索しているキーワードが表示されるため、需要があるテーマを直接知ることができます。
サジェストの使い方
以下の手順で、記事の題材を見つけます。
手順1: Googleの検索窓に「離婚 弁護士」「相続 弁護士」「交通事故 弁護士」など、自分の取扱分野+弁護士を入力します。
手順2: 表示されるサジェストを書き出します。たとえば「離婚 弁護士」と入力すると、次のようなサジェストが表示されます。
- 離婚 弁護士 費用
- 離婚 弁護士 選び方
- 離婚 弁護士 いつ
- 離婚 弁護士 なし
- 離婚 弁護士 メリット
手順3: さらに、キーワードのあとにスペースを入れ、アルファベットの「a」「b」「c」…や、ひらがなの「あ」「い」「う」…を入力すると、それに続くサジェストが表示されます。これにより、より具体的なテーマが見つかります。
手順4: 同様に、「弁護士」を含めないキーワードでもサジェストを確認します。「離婚 慰謝料 相場」「相続放棄 期限」「交通事故 示談 流れ」など、相談者が弁護士を探す前に調べている言葉が見つかります。
関連キーワードとは
検索結果ページの下部に「関連する検索」として表示されるキーワード群です。サジェストと同様に、実際に検索されているキーワードが表示されます。サジェストとは異なる切り口のキーワードが見つかることがあるため、両方を確認します。
無料ツールを使う方法
サジェストを1つずつ手作業で確認するのが手間な場合、無料のツールを使って一括で取得できます。
- ラッコキーワード: キーワードを入力すると、関連するサジェストを一覧で表示してくれます。無料で利用可能です
- Googleキーワードプランナー: Google広告のアカウントがあれば、キーワードの月間検索数を確認できます。検索数が0のキーワードは需要がないため、候補から外します
サジェストから拾ったキーワードの中から、以下の条件を満たすものを優先的に記事にします。
- 自分の取扱分野に関連する
- 相談者が弁護士に相談する動機になりうる内容である
- 検索結果の上位にポータルサイトだけでなく個別の事務所サイトも入っている(競合が強すぎない)
法律解説・手続き案内・事例紹介の3タイプと使い分け
題材が決まったら、次に考えるのは記事のタイプです。弁護士が書くSEO記事は、大きく3つのタイプに分かれます。それぞれ役割が異なるため、使い分けることで集客効果が高まります。
タイプ1: 法律解説
法律の制度や権利義務について解説する記事です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 例 | 「養育費は何歳まで請求できるか」「相続放棄とは何か」 |
| 想定読者 | 制度や権利について知りたい段階の人 |
| 相談への近さ | やや遠い。知識を得ることが目的で、すぐに弁護士に相談する意図は薄い |
| 書き方のポイント | 正確さが最重要。条文の根拠を示す。ただし法律用語だけでなく、平易な言葉で説明する |
法律解説は検索ボリュームが比較的大きいため、アクセスを集めやすいです。ただし、読者はすぐに相談するつもりがないため、問い合わせへの直接的な効果は薄いです。サイト全体のアクセス基盤を作る役割を担います。
タイプ2: 手続き案内
実際に手続きを進めるための流れや必要書類を説明する記事です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 例 | 「離婚調停の流れと期間」「相続放棄の手続きと必要書類」 |
| 想定読者 | 手続きを進めようとしている段階の人 |
| 相談への近さ | 近い。手続きの全体像を把握したうえで、弁護士に依頼するかどうかを考える段階にいる |
| 書き方のポイント | 手順をSTEPごとに示す。期間・費用・必要書類を具体的に書く。「弁護士に依頼した場合」と「自分で行う場合」の違いを示すと判断材料になる |
手続き案内は、読者が「自分でやるか弁護士に頼むか」を判断する場面で読まれます。弁護士に依頼するメリットを自然な形で伝えられるため、問い合わせにつながりやすいです。
タイプ3: 事例紹介
過去に扱った事案をもとに、どのような経緯で解決に至ったかを紹介する記事です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 例 | 「養育費の増額を調停で認めてもらえた事例」「自己破産後に生活を立て直すまでの経緯」 |
| 想定読者 | 自分と似た状況の人が、弁護士に相談してどうなったかを知りたい人 |
| 相談への近さ | 最も近い。「この弁護士に相談すれば自分も同じように解決してもらえるのではないか」と感じる |
| 書き方のポイント | 守秘義務に配慮してフィクション化する(具体的な人物・場所・日時は変更する)。結果だけでなく経緯を書くことで読者が自分の状況と重ね合わせられるようにする |
事例紹介は検索ボリュームが小さいですが、読んだ人が相談する確率が最も高いです。少ないアクセスでも問い合わせにつながるため、費用対効果が高い記事タイプです。
3タイプのバランス
1つのタイプだけで記事を書き続けるのではなく、3つのタイプをバランスよく組み合わせることが重要です。目安として、次のような配分が考えられます。
| タイプ | 配分の目安 | 役割 |
|---|---|---|
| 法律解説 | 40% | アクセスの基盤を作る |
| 手続き案内 | 30% | 相談を検討している人を集める |
| 事例紹介 | 30% | 相談への決め手を作る |
月に何本書くかの考え方
題材と記事タイプが決まったら、最後に考えるのは月に何本書くかです。結論から言えば、月2本を最低ラインとし、月4本を目標にするのが現実的です。
月2本の根拠
SEO対策で効果を出すには、サイトに一定のコンテンツ量が必要です。月2本のペースで記事を書けば、半年で12本、1年で24本になります。20〜30本の記事が蓄積されると、複数のキーワードで検索結果に表示されるようになり、アクセスが安定し始めます。
月1本のペースでは、1年で12本にしかなりません。これではキーワードの数が足りず、アクセスの基盤を作るまでに時間がかかりすぎます。
月4本が目標である理由
月4本のペースであれば、半年で24本、1年で48本になります。これだけの記事数があれば、複数の分野でキーワードをカバーでき、サイト全体のドメインパワーも強くなっていきます。
ただし、独立直後は事務所運営と並行して月4本の記事を書くのは負担が大きいです。以下のような工夫で執筆の負担を軽減できます。
- 1本の記事の長さを決めておく。2,000字〜4,000字を目安にします。短すぎると検索エンジンに評価されにくいですが、長ければよいというものでもありません
- テンプレートを作る。「導入 → 結論 → 理由 → 具体的な手順 → まとめ」のような構成を決めておけば、毎回ゼロから考える必要がなくなります
- 音声入力を活用する。相談者に説明するように話して文字起こしし、あとから整える方法もあります
- 週に1回、執筆の時間を確保する。「金曜日の午後は記事を書く時間」のように固定すると、習慣化しやすくなります
記事数と更新頻度の目安
| 月の記事数 | 半年後の記事数 | 1年後の記事数 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 月1本 | 6本 | 12本 | 最低限。効果が出るまでに1年以上かかる可能性が高い |
| 月2本 | 12本 | 24本 | 最低ライン。半年後からアクセスが増え始める目安 |
| 月4本 | 24本 | 48本 | 理想的。1年後には安定したアクセス基盤ができる |
| 月8本以上 | 48本以上 | 96本以上 | 質を維持できるなら効果は大きいが、開業直後の弁護士の業務と両立は難しい |
記事の質と量はトレードオフになります。質の低い記事を量産しても効果は出ません。月4本が難しければ月2本でよいので、1本1本の内容を充実させることを優先してください。
まとめ
弁護士のSEO記事で何を書くかは、法律の体系ではなく相談者の悩みから決めます。題材の見つけ方は2つあります。1つは事務所に来る相談から拾う方法で、初回面談の記録や電話での問い合わせ内容がそのまま題材になります。もう1つはGoogleのサジェストや関連キーワードから拾う方法で、実際に検索されている言葉を直接確認できます。
記事のタイプは、法律解説・手続き案内・事例紹介の3つに分かれます。法律解説はアクセスの基盤を作り、手続き案内は相談を検討している人を集め、事例紹介は相談への決め手を作ります。3タイプをバランスよく書き分けることが、アクセスと問い合わせの両方を増やすポイントです。月に最低2本、目標4本のペースで、1本ずつ内容を充実させていきましょう。